80 魔剣・魂喰らい(ソウルイーター)
首を切り落とされたドークツは憑依の実の力でブランカに乗り移ったままだ。
「ワ……ワシの身体がァァァーー!!」
「これで終わりだ!」
ホームは首だけでなくドークツの残った体を全てバラバラに切り裂いた。
「ウワァアアアア!!」
それがドークツの断末魔の声だった。
ドークツはブランカの身体がもう弱りすぎていて動けない為、身体すら動かせなかった。
更に本体は生命活動を停止……ドークツはブランカの中で死んだのだ。
「あんちゃーーーん!!」
残ったのはウドの大木のソークツだけだ、しかも私はもうこいつの魔法無効の正体を見抜いた。
「ルーム! ありったけの魔法を全種類その手に向かって試してくれ!」
「承知致しました! ファイヤー! サンダー! フリーズ! エアリアル! ソイル!」
ルームが使ったのはどれも初心者が最初に覚えるような子供用練習魔法だ。
そして……それは私の想定通りの結果になった!
ソークツの噛み砕かれた左手の指輪がルームの魔法を受ける度に鈍く光り、魔法を無効化していたのだ。
「やはりレジストリングの相乗効果だったか!」
「ヒッ! くんなー! オバエ……こっちくんなーっ!!」
ソークツはもう戦意を失っていた、今までこれ程相手に追い詰められた事が無かったのだろう。
「だが、断る! お前はここで終わりだー!」
私は遺跡の剣で狼狽えるソークツの右手を斬り飛ばした!
ソークツの斬られた右手は弧を描いて離れたところに落下した。
「やはり、こちらの手もそうだったか!」
ソークツの右手にはやはり怪しい色の指輪が全部の指にはめられてた。
どうやら色的にこちらは死、精神、光、闇、呪いといったデバフ系無効の指輪だったようだ
「ビャアアアア…… オバエ……ツヨイ、オデ、タスケテ」
ソークツは命乞いを始めた。
奴には人生で初めての行動なのだろう、ソークツは体中から汚い汁を垂れ流しながらジタバタしていた。
「ルーム! もうこいつには魔法無効は無い! 今までの魔法をありったけぶちかましてくれ!!」
「承知致しましたわ! 最大級のぉ……サンダアアアア・ブレェェェェーーーイク!!!」
「ウギャアアアアアーーー!!! オデ、シヌウウウウーーー!!!」
もうこれでボス戦も終わりだろうとルームは持てる魔力の全てを出し切った!
渾身のサンダーブレイクを受けたソークツは黒焦げになり地面にゆっくりと倒れた。
「やった! これで終わりだ!!」
「ユカ様! 私やりましたわっ!!」
これでついに盗賊達は全滅した! みんなそう思ったし、私もそう考えた。
「ウウウウウ……アジト……ボス……」
黒こげのソークツがまだ生きている!? しかもボスとか言っていた。
その直後、祭壇の奥の部屋から黒ずくめの人物が姿を現した!
「貴様ら……よくもオレの住処をここまでメチャクチャにしてくれたな!」
「ボス……ケテ」
「ソークツ……貴様よくもまあそんなザマでそんな事が言えるな! 死ね!」
いきなり現れた大剣を持った鎧の男が一閃でソークツをぶった切った!
そしてその男はさらにドークツの死体も一閃したのだ!
「カアアアアーーー不味い! なんて不味い魂だ!」
一瞬で切り裂いたソークツとドークツの死体を食らった男の持つ剣が黒く怪しい光を放っていた。
「お前は誰だ!!?」
「フン! 小僧……人に名前を聞くなら自分から名乗るのが礼儀ではないのか?」
「盗賊ボスにしては随分と礼儀正しいな!」
「相手が誰か聞いてからでないと魂が美味くならんからなぁ!」
「……いいだろう、ボクはユカ・カーサだ!」
「カーサ……あの戦士長の息子か……いい魂が食えそうだな! 俺の名前はアジトだ」
「……お前が盗賊団のボスか!?」
「そうだ……オレが魔剣魂喰らいの持ち主……不死身のアジト様だ!!」
コイツは強い! 今まででも最強クラスの敵の出現に私も全身に力が入っていた。
「来い! 貴様らの魂……喰らい甲斐がありそうだなぁ……!」