805 バグスとは一体誰なのか
ボクは宮殿に居たホームさん達みんなを集め、中庭に集まった。
中庭には飛行艇グランナスカが置かれてある。
ボク達はテリトリー公爵が生きていた事より、その軍勢が王都を目指している事の方が大変だと感じた。
今回のテリトリー公爵には魔将軍アビスが手を貸しているわけでは無いが、それよりもタチの悪いバグスが手を貸している可能性が高いのだ。
バグスの目的が何かはまだ分からない。
だがアイツがボク達だけでなく世界を憎んでいる事は確実だ。
何故彼がそこまで憎しみに凝り固まっているのかはわからない。
だがどうやらソウイチロウさんは薄々その正体に気が付いているようだ。
『ソウイチロウさん、あのバグスって何者なんですか?』
『あまり認めたくないが……彼は私の知っている人物に違いない……』
ボクはそれ以上彼に聞く事は出来なかった。
何だかそれを聞いてしまうと彼に悪い気がしたからだ。
『だが、一つだけ言えている事がある。もし本当にバグスが私の知っている彼なら、これほど厄介な存在は居ない。何故なら彼は私を上回る実力の持ち主だからだ!』
え!? この世界の大半を知り尽くしているとも言えるソウイチロウさんが兼ねたいと思っているだけの相手?
一体バグスの正体は何なのだろうか……まあ彼が転生者だという事だけはわかったが、ボク達はまだ彼の能力が何なのかはわからない。
アイツはコインを弾いて古代遺跡を崩壊させたが、それはあくまでも彼の能力の一環であり、それが彼の能力というわけではなさそうだ。
能力の正体が分からないまま、あのバグスと戦う事になれば、ボク達がいくら世界最強レベルの力を持っていても勝ち目は無さそうだ。
まずはあのバグスの能力が何なのかを見極めなければ。
その上で彼が手を貸したであろうテリトリー公爵の軍勢を倒すのはバグスのスキルを見極める上で役に立ちそうだ。
「グランド皇帝、ボク達はテリトリー公爵の軍勢をこの王都に侵攻させないために行ってきます!」
「クーリエ・エイータ様とその仲間のユカ、頼んだぞ。この国の未来はお前達絵にかかっているのだ」
皇帝グランドがボク達に頭を下げた。
ボクはそれに返答する形で頭を下げ、その後飛行艇グランナスカに乗り込んだ。
「さあ、みんな行くよ、目的地は……テリトリー公爵領との関所のある橋だ!」
ボクは飛行艇グランナスカを空に飛ばし、南南西を目指す事にした。
――確か、この辺りに黒竜王ヘックスの住処があるんだよな。
気を付けないと……。
だが、ボクがその山の上空を通ろうとした時、下から何か迫ってきた!
これはっ! 黒い光だ!
まさか、黒竜王ヘックスが起きているというのか!?
ボクはグランナスカの操縦桿を握り、黒い光をギリギリで避けた。
だがその光はまた別の方向に向け、撃たれた。
ダメだ! このままではいずれグランナスカが撃たれて墜落してしまう!
ボク達は急遽グランナスカを少し広めの山あいに着陸させる事にした。
まさか、黒竜王ヘックスが起きていたなんて……。
このままでは空を飛んでの度は出来そうに無さそうだ。
どうにか大魔女エントラ様に話してもらい、黒竜王ヘックスを説得してもらわないと……。
「エントラ様、お願いがあるんですが……」
「分かってるってねェ。あのヘックスの馬鹿のことだろ。一体アイツは何を考えているんだかねェ」
大魔女エントラ様にはボクの言いたい事が伝わっているようだった。
「グォオオオオオオオオオン!」
山の中腹の辺りからとてつもなく大きな咆哮が聞こえた、これが……黒竜王ヘックスの鳴き声なのか!?
ボク達は鳴き声の聞こえた山の中腹を見上げた。
あそこに黒竜王ヘックスがいるのだろうか?
ボク達は全員で歩いて山の道を上る事になってしまった。




