803 祭壇のエリア
流石は世界最大の帝国とも言えるグランド帝国のパーティーだ。
他所で見られないようなものが所狭しと並んである。
しかも料理の種類がケタ外れだ。
あの――ガガモッチャしたプハのトトハペ――なる謎料理や、ミクニの郷土料理。
それにボク達が自由都市リバテアで考案した揚げ物等も色々と存在する。
それらの料理が所狭しと並び、さらにヘクタール領の貴族焼きも存在する。
これらの料理を帝国最高のシェフが作るわけだ。
そりゃあ美味しくないわけが無い。
料理だけでも最高級なのに、それに加えて音楽や演出も国で最高のものが用意されている。
そのパーティーの主賓がボク達というのがある意味緊張するところではあるが、それだけの事をボク達がやって来たという実績そのものでもあるんだな……。
ボク達は大勢の人達に囲まれている。
ここにいる全員がボク達の話を聞きたいそうだ。
ボクが聞かれた事は、その剣は一体どこで手に入れたのか、悪徳貴族ヘクタールを倒した時の状況、白鯨モビーディックの事や伝説の大海獣レッドオクトの事に、ミクニでの話。
――そして南方での魔族との決戦等の話だ。
流石に何度も同じ話を何人もに続けていると結構キツイものがある。
だが話を聞こうとする人は別の人なので、何回同じ事を話してもその人達には新しい話なので、どんどん聞きたい人が増えていく。
なるほど、ソウイチロウさんの言っていた意味がようやく分かった。
これがパーティーの主賓の立ち位置の大変さだという事なのか。
『ユカ、だから言っただろう。結構キツいぞって』
『本当ですね、でもこの人達はボクの話を聞きたいんだから、それに応えないと……』
『そうか、無理するなよ……どうしても無理なら私が代るからな』
ボクにとってソウイチロウさんは頼れる先輩といった感じだろうか。
彼がいざという時に助けてくれるので、ボクはある意味安心して動く事が出来る。
ボクだけでなく、パーティーの主賓になっているのはホームさんやルームさん、それに大魔女エントラ様とアンさんもだ。
しかしホームさんやルームさんは慣れたものだ、流石は貴族の子供といったところか。
そして大魔女エントラ様やアンさんは長年の経験があるだけにこういったパーティーの立ち振る舞いには慣れたものなのだろう。
マイルさんやカイリさん、フロアさんとサラサさんはパーティーに参加している人でも貴族等ではない一般人の人達と会話をしているようだ。
あれ? そう言えばエリアさんの姿が見えないぞ……。
このパーティー、皇帝グランドの計らいで参加者には身分も人種も関係なく開かれている。
その為、この宮殿の中庭を使った大規模なガーデンパーティーにしてあるのだ。
天候の事は大魔女エントラ様やアンさんが魔法を使い、天気を安定させているので雨天でのパーティー中止という事は無いようだ。
皇帝グランドは一番高い場所の中庭の見える位置からボク達を見ている。
あまりに皇帝がボク相手に頭を下げたりする姿を見せるのはやはり国としての印象としてはあまり良くないようだ。
「皆の者よ、今日はよく集まってくれた。この皇帝グランドが今日ここに皆を呼んだのは是非とも伝えたい事があるからだ。こちらを見てもらいたい」
皇帝グランドが手を伸ばした方には、なんと……大きな祭壇が用意され、そこにはエリアさんが立っていた。
「この御方こそが、創世神、この国を救ってくださった神クーリエ・エイータ様の化身、エリア様だ。エリア様は皆が魔族によってアンデッド化していたのを救って下さったまさに女神とも言える方なのだ!」
帝国の国民達がみんな祭壇の上のエリアさんを見上げた。
そして、会場の全てから割れるような拍手喝采が巻き起こった。




