801 王都全体の正常化
全体が死んだような感じに静まり返っていた帝国の宮殿に活気が戻ってきた。
ボク達は来賓として最高の部屋を用意され、エリアさんに至っては救国の聖女であり、創世神として特別な待遇で迎え入れられている。
まあそれもそうだろう。
この宮殿は魔将軍アビスのせいで住民の全てがアンデッドにされていた。
それを全員元の人間に戻したのがエリアさんの創世神クーリエ・エイータの力だ。
彼女の力は知らないうちに空気感染でアンデッド化してしまっていた住民を元の姿に戻す事が出来た。
まあどうも彼女の話だと、アンデッド化した人はまだ数日しか経っていないから助ける事が出来たらしいが、もしこれが……アンデッド化して十日、一か月以上になっていた場合は、肉体を元に戻す事が出来ずに浄化するしかできなかったらしい。
まあボク達が飛行艇グランナスカでこの王都、宮殿に到着したのが、まだ住人達がアンデッドになって日が浅かったので全員元に戻す事が出来たという事か。
でもそれが出来たのは創世神の半身の力を取り戻したエリアさんだから出来た事であり、そうでなければボク達は皇帝と敵対してこの国は終わっていた可能性すらある。
「まあユカとかエリアちゃんはこの国にとっての救世主になったってわけだねェ」
「そうじゃな、まあそれも悪い話ではあるまい。ユカ坊やエリア嬢がこの国の救世主と認識されればワシらも動きやすくなるからのう。それにあの毒婦……アビスといったか、アレはまだ生きておるわ」
「まあ異界に閉じ込めたとはいえ、あの魔力なら出てきてもおかしくないからねェ。安心は出来ないわねェ」
大魔女エントラ様とアンさんの。最強の二人は何か料理を食べながら二人でモゴモゴと会話をしていた。
「この宮殿に来たのは何年ぶりかしら。確かお父様に連れられてきた事がありましたわ」
「僕は二年ぶりってとこかな。騎士団のみんな、元気だと良いんだけど」
元気って言うか、全員アンデッド化していたけどね。
まあエリアさんのおかげで全員元に戻れたから結果オーライといえばそうかもしれない。
「僕は久々に騎士団の人達に会ってきます」
「お兄様、行ってらっしゃいませ。さて、私はここにある図書館に行かせてもらいますわ。過去の魔導書とか色々ありそうですし」
ホームさんは騎士団に、ルームさんは図書館に向かった。
皇帝グランドの許可でボク達はこの宮殿のどこにでも入っていいという許可をもらったので、全員が自由行動中だ。
飛行艇グランナスカは宮殿の広い中庭に着陸し、フロアさんやサラサさんも来賓用の部屋でゆっくりと休んでいる。
ここ数日、あの巨竜城塞と戦ったりしてみんなかなり疲れているようだ。
フロアさんとサラサさん、それにカイリさんとマイルさんはどちらも疲れてベッドでゆっくりと休んでいるようだ。
さて、ボクも久々にベッドでゆっくりと休ませてもらうかな。
……と思っていたのだが、エリアさんがどうやら宮殿の外に行くらしい。
「エリアさん、どこに行くんですか?」
「街に……まだ街の人達は助けられていませんから」
そうか、そういえばエリアさんがアンデッド化した住人を助ける事が出来たのはあくまでもこの宮殿の中だけだ。
そう考えると王都全体ではまだアンデッドのままの人達が蔓延している。
そんな危険な場所にエリアさん一人だけを行かせるわけにはいかない!
「ボクも行くよ!」
「ユカ、ありがとう」
ボクとエリアさんは街に向かい、広場でエリアさんがスキルを使ってその周辺の住民をアンデッドから人間に戻していった。
それはかなり大変な作業だったみたいだが、どうにかエリアさんが頑張ったので夜の日が暮れるまでに王都全体の住人が人間に戻る事が出来たようだ。
そして、王都の活気が戻ったのはその次の日だった。




