790 崩れ行く城塞
魔力の奔流が消えた後、その場に立っていたのは……魔将軍アビスの姿だった!
まさか!? あの世界最強の大魔女エントラ様が負けたのか??
「お姉様、流石ですわ。人間ごときがアビスお姉様に勝てるわけなかったのよ」
魔将軍アビスはニッコリとアナ達眷属に微笑みかけた。
「違う……お姉様があんな気持ち悪い表情を見せるわけが無い。何、何なのよ一体!?」
「あらあら、もう少し騙せると思ったんだけどねェ」
声は魔将軍アビスだがその話し方は間違いなく大魔女エントラ様だ!
「ど、どういう事よ、お姉様はどこなの!?」
「ここにいるけどねェ。抜け殻だけならねェ!」
彼女達では無いが一体どうなっているのか??
その答えは彼女がすぐに教えてくれた。
「魔将軍アビス、彼女は今頃……妾の開いた何も無い異空間に居るからねェ」
「そんな、キサマ! お姉様の身体をどうしたというんだ!」
「そんなに種明かしが聞きたいかねェ。まあいいわ。ちょっと待ってるんだねェ」
そう言うと魔将軍アビスの身体が粉になって砕け始めた。
そのすぐ後に、その傍に横たわっていた大魔女エントラ様が起き上がって話を始めた。
「つまりこういう事だねェ。妾は自らの意思をアビスの身体に移し替える事によって彼女の思念体を外に追い出したってわけだねェ。その直後にこの身体を使って魔将軍アビスの思念体をあ妾の開いた異空間の門に送り込んでやったってわけだねェ」
「そんな、お姉様は死んだというの??」
大魔女エントラ様は笑っている。
「いや、もし魔将軍アビスが死んでいたらアンタ達全員もうそこに存在しないからねェ。残念ながら殺すことは出来なかったのよねェ。でも、もうアンタ達はアビスの力が無ければただの無力。もう諦めてさっさと逃げるんだねェ」
「何故!? わたし達を殺さないの?」
「そう言いながらもアンタ達が殺せないのは分かってるって。どうせ殺した相手の身体を乗っ取ってその身体で生き続けるだけなんだろうからねェ!」
目論見を見破られたアナ達はわなわなと震えるしかなかった。
「まあ今後、悪さが出来ないように能力は封じさせてもらうけどねェ!」
「ふざけるな! お姉様がいなくてもお前達ごとき、全員殺してやる!」
ダークリッチのアナが首を落とされて死んだ巨竜に魔法をかけた。
「さあ、蘇りなさい、ドラゴンゾンビ!」
「GHAAAAAAAAA!」
首のない巨竜が立ち上がり、かりそめの命を与えられた怪物がボク達に襲い掛かる!
「ブーコ、トゥルゥー、アイツら相手にいがみ合ってる場合じゃないわ。力を貸して!」
「仕方ない、わかったわよアナ」
「そうね、ここで死にたくないわ」
ブーコと呼ばれたバンパイアロード、そしてビーストマスターのトゥルゥーという少女、彼女等は力を合わせてボク達と戦うつもりのようだ。
「ふむ、どうやらぱーてぃー戦とかいう奴みたいじゃのう。ワシも本気を出すかのう」
「お師匠様、私も戦いますわ!」
「僕も戦います、新しく手に入れた魂の救世主の力、見せてやる!」
ここからはお互いの総力戦だ。
ボクはダークリッチ、バンパイアロード、ビーストマスターをみんなに任せ、巨竜城塞を倒す事にした。
「この巨大さなら、その重量で自滅するはず! アイツの足元の地面の高さを一気に高くチェンジッ!」
「「GAGYAAAA!???」」
巨竜城塞はいきなり地面の高さが変わった事に驚いている。
それじゃあ一気に潰してやる!
「みんな、少し離れててっ! 巨竜城塞の足元の地面を元の高さにチェンジッ!」
「「GYAAAAAAOONN!!」」
ズドォオオオオオンンッ!!
地面が無くなった巨竜城塞はその重みで一気に地面に叩き落とされた。
地面と激突した事で、巨竜の身体は粉々に砕け散り、強固で堅牢だった城塞は一瞬で粉々の瓦礫になり果てた。




