77 銀狼王ロボとブランカ
エリアは自分の体の無理を押してまで魔獣の浄化を引き受けた。
「グルルル……」
「偉大なる銀狼王・ロボよ……俺の声が聞こえるか」
「ガゥウウウ(我を呼ぶお前は誰だ……)」
「俺はモッサール族のフロア……貴方と話がしたい」
「ググゥゥゥウウ(森の民か……久しいな。我に何の用だ)」
フロアさんはロボと二人だけで伝わる話をしていた。
「俺は貴方の妻を助けたい。力を貸してくれるか」
「グウウウウウウウ(無駄だ。ブランカはもう助からん)」
「しかし貴方は助かった。この力をもう一度使えるとするならば?」
「グググウクゥウ……(我を助けた奇跡を再び起こすというのか?)」
「そうだ。その為に俺に力を貸してほしい」
「ゴオオオガガァァ(良いだろう。森の民よ……感謝する)」
フロアさんとロボの話がついたようだった。
「貴様らァ! ボヤボヤしとる間は無いぞ! ブランカ! 奴らを食い殺せ!!」
「GUAAAAAAAAA!!」
「ゴァァァ!!(ブランカ!)」
ロボがブランカの首筋に深く嚙みついた! 致命傷は避けているように見えるが深く牙を突き立てている。
「GAAAA!」
ブランカは噛みつかれた首筋からロボを引きはがそうと必死で前足の爪を突き立ててロボの腹部や前足、顔をかき切った! ロボの白銀の毛皮から流血している。
「銀狼王よ……どうにかブランカを引き付けておいてくれ! ……エリアさん!!」
「大丈夫です。準備は出来ました……! 聖なる力よ、悪しき力に侵された獣に聖なる力をもってその穢れを取り除き給え! レザレクション!!」
エリアの体力と精神力は枯渇寸前である。多分今日MPを回復してもレザレクションを使えるのはこれが最後だろう。
「ウヘヘヘェ! お゛んなだァ~!!」
「!? しまった! コイツがいた!」
ソークツが動けないエリアを狙い撃ちに振りかぶってきた!
いくらノーコンでも動けないとこのままではエリアが即死だ!
「オデ、オンナをゴロシで肉をくうのがすきなんだな!!」
「ソークツの居る床を天井まで高くチェンジ!!」
「ノガァ?」
間一髪である! 振りかぶった瞬間にソークツの居た床が神殿跡の天井まで10メートルほどせり上がった!!
「ホゲェ!!?」
なんというか、不幸なエレベーター事故みたいな状態で、ソークツはせり上がった床と天井に挟まれた! 巨体故に起こった不幸と言える。
その後バランスを崩したソークツは10メートル下まで一気に落下して床に大穴を開けた。
「ソークツーーーッ! お前はなんでそう馬鹿なのだ!?」
「あんちゃん……オデ……バカちが……」
流石の巨体もこのダメージで気絶した。今のうちにロボとブランカを助けないと!!
「グルルルル(ブランカ! 我の最愛なる妻よ!)」
「kUUUUUUUUUNN」
ブランカの叫びが凶悪さを失っていた。レザレクションで浄化された事により漆黒の毛皮だったブランカはとても美しい純白の狼になっていた。
「銀狼王・ロボよ……約束は守ったぞ!」
「クウウウウウウウ(森の民とその仲間よ。我はこの恩を決して忘れはしない!)」
ブランカは疲労していたがロボに寄り添うように隣に立っていた。
少し安心していた私達の前にまた厄介な奴が姿を現した!!
「ア゛ア゛ア゛ーーーーー! オバエラ! ゴドス! デッタイニブッゴゴス!」
穴から這い出てきたソークツは怒り心頭だった。どうやらヤツのジョブは狂戦士のようだ。
そのソークツの前に銀と白の二匹の大狼が立ちはだかった! どうやら彼らは私達の為に戦ってくれるようだ。
「銀狼王よ……力を貸してくれるのか」
「グウウウウウウ!(森の民とその仲間よ! 我は誇り高き銀狼王、受けた恩は返す!)」
今の私達の目の前の敵は狂戦士と魔獣使いだ。しかし魔獣使いはもう使える能力が無いので今はソークツだけを倒す事を考えよう。
「貴様ら! 絶対に許さんぞ!! 魔獣使いのワシの究極の技を見せてやるわ!!」
なんと! 魔獣使いにはまだ奥の手が残っているようだ!!