776 オリハルコンの最強武器
サラサさんの魔法銃は凄い威力だった。
魔力を矢として打ち出すので、本人のMPがある限りは矢が尽きる事が無い。
オリハルコンが魔導金属で魔力を蓄積放出できる性能だと知っているターナさんだ
ただしこのオリハルコンで出来た魔導銃、使いこなせるのは魔力の高さと弓矢の射撃能力の高さが問われるので、サラサさん以外でコレを使いこなすのは無理だろう。
「ターナ。我、感謝する」
「良いんだよ、アタシも好きでやってる事だし、これが多くの人を助ける武器になるならアタシは喜んで協力させてもらうよ」
これでボク、ホームさん、エリアさん、ルームさん、大魔女エントラ様、カイリさん、フロアさん、サラサさんの武器が揃った。
それをジト目で見ているのはアンさんだった。
「あ、そうそう。アンタにはこれだね」
「ワシにも何かくれるのか?」
ターナさんがアンさんに手渡したのは、銀色の布だった。
「おや、これは何かのう?」
「これはアンタの武器さ。アンタ……人間じゃないだろ?」
「!? な、何を言うかのう。こんな可愛らしいわらしを見て人間じゃないなんて……」
「隠さなくてもいいよ、ドラゴンの神様」
「知っておったのか……まあ良いわい。それでその布がワシの武器とは?」
アンさんは手渡された布を不思議そうな目で見ていた。
「それはオリハルコンの細い糸で織った布、魔導伝達力はかなり高いはずだよ」
「ほう、それではどうなるのかのう?」
「その布はアンタの思い通りの自由自在の形に姿を変えるんだ。やってみな」
「こう……か?」
アンさんが魔力を込めると、銀色の布は彼女を守る羽衣のようになった。
「ユカ、一度その剣でその布目掛けて攻撃してみて」
「え!? そ、そんな事をしたら……」
「大丈夫、アタシが保証するから」
ボクはイマイチおっかなびっくりに剣でアンさんの布に斬りかかった。
すると、布は彼女を守るように動き、ボクの剣を絡め取ってしまった。
「な!? これはっ??」
「これがこの布の力さ。オリハルコンで出来た布は攻守一体の最強の武器になる。さあ次はその布を手に巻くようにイメージしてみて」
「手に巻く、こうか?」
すると、アンさんの銀色の布は意志を持っているかのように彼女の小さな拳に巻き付いた。
「それで得意の魔力を込めてみて」
「魔力……こうか! 雷よ、ここにあれっ!」
グワガラガシャ……ピシャアァアアン!
「す、凄い!」
「そう、これこそがこの伝達布の力、本人の持つ魔力を増幅し、滞留させた後一気に解き放つ事が出来るのさ」
「ほう、確かにこれはワシにピッタリの武器じゃのう。これなら龍神の姿になった時にも装飾具として使えるわい」
銀色の布を自在に操り、アンさんはとても上機嫌だった。
そして次にアンさんは双子の狼、シートとシーツの方を見てニッコリと笑った。
「もちろんアンタ達のもあるからね。ユカ達の力になりたかったんだろう」
そう言ってターナさんが用意してくれたのは、巨大な牙と巨大な獣用の手甲だった。
「これは二匹分あるから、ケンカする事は無いからね」
そう言ってターナさんはシートとシーツを大人しく座らせ、牙と手甲を装備させた。
これで前と同じようにかかとを叩けば爪の部分が出て、もう一度叩けば爪が裏に引っ込むから、前と同じような使い方出来るからね。
「ガォオオオオオンンッ!」
シートが高らかに咆えた。
それは間違いなく嬉しさからくる叫びだったのだろう。
「ほら、アンタにもコレ、お兄ちゃんと同じやつだからね。ほら、動かないの」
シーツの真っ白な脚に銀色の手甲が装備された。
彼女もとても嬉しそうだ。
「グォオオオオンッ!」
シーツも大きく咆えた。
これでボク達は、個々の持つ元々の最強武器に加え、足りなかった分の全員分、オリハルコンで出来た最強武器を手に入れたのである。




