775 ターナさんの本領発揮
知らない間にぐっすりと眠ってしまったボクだったが、翌朝目を覚まし辺りを見渡した。
どうやらこのアルカディアでは何か特殊な灯りを使う事で朝の時間帯と夜の時間帯を作っているようだ。
だから夜遅くになると眠くなり、朝になると目が覚める生活が普通に行われている。
ボク達は荷物をまとめ、ホテルからダルダロスの工房に向かった。
確か今日くらいにはターナさんの作っている武器防具が完成するはず。
ボク達がダルダロスの工房に到着すると、汗だくのターナさんが良い笑顔で待っていた。
「ユカ、来るのを待ってたよ。ほら、これをご覧」
「これは!」
ボクの目に映ったのは、五色のレジストベルトだった。
「これはゾルマニウムで作られていたけど、今度はオリハルコンで作ってるから普通の武器じゃ絶対に壊れないよ」
これは凄い!
やはりターナさんは今唯一残っている世界唯一の魔技師なのだろう。
そうとは知らなかったが、彼女がいなければボク達は古代金属を手に入れても持て余していただろう。
「これも修理しておいたからね、さあ持って行ってくれよ」
「これは……」
エリアさんのサークレットもレジストジュエル以外の部分がオリハルコンになっていて、守備力、魔法防御力以外にも魔法増強力も追加されていた。
つまり、魔力を使った時に少しの力で全体に効果を倍加する事が出来るので、今まで以上の防護結界やヒーリング効果を発揮する事が出来るというわけだ。
「ありがとうございます。ターナさん」
「良いんだよ、アタシが好きでやっている事なんだし。それにこれをやっていると気がまぎれるんだ……」
ターナさんはパレス大将軍の事を忘れようとしているのだろう。
「あ、そうそう。他の武器はアタシの弟子になったヤツにも手伝ってもらったからね、これはフロアの武器だよ」
「これは……あれ? 俺は鞭を頼むって言ったよな? コレってどう見ても剣だよな」
ターナさんが笑っている。
でもどうやらフロアさんをからかっているわけではなさそうだ。
『ユカ、これは面白い武器が出来たみたいだぞ。まさかあのファンタジーロボアニメの武器をここで見るとは思わなかった』
『ソウイチロウさん、それってどういう事ですか?』
『まあ見ていればいいさ』
ソウイチロウさんはフロアさんに渡された武器が何なのかが分かっているようだ。
「その剣の柄のボタンを押してみな」
「これ……か? これは!?」
フロアさんが剣の柄のボタンを押すと、剣の長さが倍以上になった。
そしてその後剣は細かい刃を細い鎖でつないだような鞭に変化した。
「これは! 凄い」
「どうだい、これなら剣としても鞭としても使えるってわけさ。もう一度柄のボタンを押せば元に戻るよ」
フロアさんが鞭の柄のボタンを押すと、一気に縮まり、元の剣のサイズに戻った。
「これは剣としても鞭としても使えるのか!」
「そう、アタシの考えた自在剣ってやつさ」
「ありがとう、これなら俺も十分戦えそうだ!」
ニッコリ笑ったターナさんは次に何かを取り出した。
それは引き金のついた弓矢のような物だった。
「これはサラサさんの分だね」
「これを……我に?」
サラサさんが弓を撃つと、遠くに有った金属の塊が粉々に砕けた。
「凄い! これ……我が」
「そう、これは魔法銃。本人の持つ魔力が矢になるので、矢が要らない弓矢みたいなモノかな」
ターナさんが作った武器は、使う本人の魔力を矢に変えて撃ち出す武器だった。
『これは、ボウガンの一種みたいだな。それとライフルが合わさったようなもんだ』
『ソウイチロウさんはこの武器も知っているんですか!?』
『ああ、こういうものは大抵知らないものは無いからな』
ボクはターナさんの技術力の高さにも驚いたが、そのターナさんが作った武器の全てを把握していたソウイチロウさんにもっと驚いてしまった。




