76 ソークツとドークツ
レザレクションの聖なる光を浴びた黒い魔獣はどんどん色が薄くなり……最後には白銀の大きな狼に戻った。
「ウグゥウウウウウ……」
そして、白銀の狼はその巨体を倒し、横たえて眠りについた。
「何という事だァァァ!!ワシの魔獣がァァア!!」
盗賊のボスらしき二人組の小さいほう、魔獣使いが叫んでいた。
レザレクションで魔素に侵された魔獣が元の獣に戻ったからだ。
「ソークツ! そいつを殺せ!!!」
「りょーかい、あんちゃん…オデ、アイツごろしてもい゛イ?」
肉を食っていた大男のトロルみたいなやつがニタニタ笑いながら私達を見ていた。
何だこの兄弟は!? 大きな弟に小さな兄って……流颯白書の弩躯蘆兄弟か!?
しかもデカい方はテンプレというくらいのうすらバカ丸出しだ!!
「馬鹿! 殺せと言ってるんだから殺してもいいに決まっとるだろうが!!」
「あんちゃんひどいよォ。オデ、バカいった」
「ヤカマシイ! 怒りはあの侵入者にぶつけろ!!」
「あーーーーーーう、オデ、あいつゴロして肉をくう」
あんな奴に殺されて肉にされて食われるなんて転生先の死に方としては最悪の死に方で絶対に御免だ!!
「ルーム、アイツは鈍重だ、魔法で一気に片付けよう!」
「承知致しましたわ! ファイヤー・ウェイブ!!」
炎の波がソークツと言われた大男を包み込んだ。
これだけの魔法なら間違いなく丸焼け確定だ!!
「あーーーーー、お゛まえ、なんがぢだが?」
ソークツは炎の魔法を全く受け付けていなかった。魔法耐性があるのか?
「何故ですの!? 私の魔法が効かないとでもいうの?? それならこれは……」
「ルーム! 少し待つんだ!!」
「サンダァア・ボルトォォォオ!!!」
凄まじい雷撃がソークツを包み込んだ、しかしやはりソークツには全く魔法が通用していないようだ。
「ゲヘヘヘ、ムダ。ムダムダ……オデ、マホウきかない」
ソークツはニタニタしながらファイヤーウェイブの残り火で手に持っていた肉をあぶって食っていた。
「馬鹿がぁ! ソークツには一切魔法が通用せんのじゃァ!!」
そんなわけがない! いくら邪神に魂を売ったとはいえ魔法が一切効かないなんて加護はあり得るわけがない!!
「コンドはオデのバンだ、いぐどーー!!」
ソークツはその辺りに転がっていた鉄の鎧を付けた盗賊の死体を拾うとこん棒代わりにわしづかみで思いっきり殴りつけてきた!
「!?」
「キャァア!!」
グヂャ! ゲギャッ! ソークツはひどい音を立てながら盗賊だったこん棒を辺り一面に叩きつけた!
叩きつけられた壁や床が酷い穴になり、盗賊こん棒は殴るたびに粉々になっていた。
幸いソークツの攻撃はまるで当たらないノーコンだったがもし一撃当たったらレベル25でも即死クラスの攻撃である。
魔法が一切効かない、一撃が即死級、これはまるで“ドラゴンズスターⅢ・Ⅳ”に出てきた鉄魔人そのものだ。アイツの攻略法を思い出そう。
「ヒャハハハハ。敵はソークツだけではないぞ! このワシ、魔獣使いのドークツ様もおるからなァ!!」
この魔獣使いのドークツというのも厄介な敵である。幸い魔獣はレザレクションで浄化されていて攻撃はしてこない。
「ヒャハハハ。魔獣はその『銀狼王・ロボ』だけではないぞォ! ブランカ! そいつらを食い殺せ!!」
ドークツがそう言うともう一頭の魔獣が姿を現した。しかしロボにブランカって……シートン動物記かよ!?
「グルルル……」
先程まで寝ていた銀狼王・ロボが目覚めた。彼の伴侶、ブランカが現れた事によって目を覚ましたようだ。
「誇り高き銀狼王よ、俺がお前の妻を助けてやる! エリアさん、お願いできますか?」
フロアさんがエリアにレザレクションのスキルをお願いしていた。彼も銀狼のつがいを助けてあげたいと思っているようだ。
「わかりました……! 私、やります!!」