769 ネオ・エクスキサーチ
ダルダロスの工房に居を構えたターナさんは水を得た魚の様に生き生きとしていた。
「ほら。そこ手を休めない。金属が変な形になっちゃうよ」
「はい、ターナ様。気を付けます」
どうやらアルカディアの中の魔技師見習いがここに集まっているようだ。
ターナさんは張り切って炉の中に金属を入れている。
今作っているのはボク達の武器防具のようだ。
ボクの剣、エクスキサーチはどうやらかなりボロボロになってたようで、ターナさんはそれを受け取り修理してくれている。
あの剣でボクはかなりの修羅場をくり抜けてきた。
最初はキマイラを倒したところから、その後は邪神竜ザッハークに邪神サマエルことテスカトリポカ、そして数万の魔族に魔将軍パンデモニウム、さらには古代の破壊神バロール。
ソウイチロウさんの記憶だと魔神ガーゼットやボーンゴーレムを倒したところからみたいだが、その記憶はボクには共有されていても実感は無い。
だからボクにとってのこの剣はキマイラを倒したところからなんだ。
そのエクスキサーチはボロボロになったので、今ターナさんが修理してくれている。
どうやらオリハルコンの素材は過去の物が色々とあるので使えるようだ。
どうしても足りなくなったらバロールの素材を出せばいい。
それまでは下手にあんなものを出せば混乱の原因になるだけだ。
「ユカ、剣が悲鳴を上げてるよ……もう少し優しく使ってあげてよね」
「剣が……悲鳴?」
「そう、限界以上の力で使わされていたからね。でも、もう大丈夫だよ」
そう言うとターナさんはニカッと笑い、胸を手でドンと叩いた。
「この剣は本当の力を発揮したくても出来なかったんだ。これはアンタの祖先の持っていた剣と二つで一つなんだ。だから二つ合わさって本当の姿になる」
「えっそれって……どういう事ですか?」
「アンタの祖先、バシラが魔王を倒す際に使った剣の名前が聖剣エルディカイザー。そしてアンタの持っている古代遺跡から手に入れた剣がエクスキサーチ。この剣は元々一つの聖剣だったってわけ。それが聖剣エクスカイザーなのさ」
――聖剣エクスカイザー!――
その剣ならボクの力になってくれるのか。
まさか遺跡に有った剣とボクの先祖であるバシラが魔王を倒した時の剣が元々同じモノだったなんて!
「その、エルディカイザーはどこにあるんですか!?」
「さあ、それは分からないなあ。世界のどこかにはあるだろうけど」
「そうなんですね」
「あ、ユカ。でもこのエクスキサーチを修理するのは問題無いからね。ちょっと待っててくれよ」
ターナさんはそう言って再び作業を続けた。
二日後、ボク達が尋ねると、汗だくのターナさんがニッコリと笑ってボクに剣を手渡してくれた。
「そらよ、この子……すっかり元通りになったよ」
「これが……ボクの新しい剣、エクスキサーチ……」
「そうだね、名前を付けるとするならネオ・エクスキサーチというべきかな」
――ネオ・エクスキサーチ!――
これがボクの新しい剣なのか。
「そうだ、ユカ。その剣を地面に立てて自分のスキルを使ってみな」
「は、はい。わかりましたっ」
ボクは地面にネオ・エクスキサーチを突き立て、叫んだ。
「ボクの目の前の地面を土の地面にチェンジ!」
「!!??」
なんと、ネオ・エクスキサーチが光り、ボクの魔力を吸収した。
そしてその後、剣からボクのスキルが放たれた!
それは、少しの力で辺り一面を土の地面にするほどの力と範囲だった。
「どうだい、これがネオ・エクスキサーチの力だよ。魔法石が埋め込まれていて、オリハルコンの刀身に魔力を貯えて一気に放出する!」
凄い! この剣の威力は今までの物とはケタが違う。
この剣なら魔将軍アビスやゲートが出ても戦える!
ボクはネオ・エクスキサーチを構え、天に掲げた。




