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768 魔技師の末裔

「そこまで怒る事無いじゃないんかねェ」

「貴女は反省しているんですかっ!」

「だーから悪かったってねェ」


 これが世界で恐れられている大魔女の姿だとは誰が思うまい。

 ボクにこっぴどく叱られたエントラはかなりしょげていた。


 普段なら大魔女エントラ様と敬称をつけるとこだが、この酷さは呼び捨てにもしたくなるレベルだ。

 彼女の悪戯のせいで、このアルカディアの天候がメチャクチャになるところだった。

 エントラが言うに、もしそうなってたら自分の天候魔法で永久に変化し続ける天気をここに用意する事も出来ると言っていたが、それは彼女がいなくても成り立つのかが不安なものだった。


 まあその大破したパネルはボクのマップチェンジスキルで全部元通りに戻したのでジバ総司令からの処分は無罪で済んだのだが。


「ここが……アルカディア、父さんの先祖がいた場所なんだね」

「はい、ターナさん。ここに魔技師がいるはずなんです」

「父さんの先祖は、ここから地上に降りたんだね。その時にどんな方法を使ったのかは今じゃもうわからないけど……」


 ターナさんは初めて見るアルカディアの島を興味深そうに眺めていた。


「ユカ、海が無いってのも不思議な場所だなー。でもここには一応水があるから人が住めているんだなー」


 元海賊のカイリさんはこの島に海が無い事を驚いていた。


「ここにある物、地上で売ったらどれくらいの金額になるのかなぁ」


 マイルさんは目をコインにしてうっとりしている。

 まあここにいる三人はこのアルカディアに始めてくる人だから、色々なモノが珍しいのだろう。


 ボク達の目的は、ここにいるはずの魔技師を探す事!

 だが、結果は散散なものだった。


「えーっ! いないんですかーっ!?」

「そうだね、今や魔技師の力を使える人はほぼいない、便利になりすぎて何でも自動で作れるようになったからねぇ」


 成程、確かにそれなら今の時代に魔技師がいないというのもうなずくしかない。

 そうなると、最後の魔技師はターナさんという事になるのか。


「ユカ、アタシを連れていってくれないか?」

「え? どこにですか?」

「そうだね、ダルダロスの工房だね」


 ――魔技師ダルダロス――。


 伝説の人物で、このアルカディアの島を作った張本人。


 今やその後継者は誰もおらず、最後の弟子スミソニアンの末裔がターナさんらしい。


「凄い! これがっ……魔技師の工房っ」


 ターナさんが目を輝かせて周囲を見ていた。

 ここには彼女の求める物が色々あるようだ。


「ユカ、すまないけどここにちょっと居させてもらっていいかな?」

「ボクは大丈夫だけど、ジバ様がどう言うか……」


 ボク達はジバ総司令に会い、このダルダロスの工房の事を訊ねてみた。


「ユカ様、そこのお嬢さんは?」

「はい、彼女はターナさん。スミソニアンさんの子孫だそうです」


 ボクのこの発言に周囲が驚いた。


「ま、まさか絶えて久しい魔技師の末裔が……まだ居たとは。ターナ様、お願いです。我々アルカディアの民にその技術を教えていただけませんでしょうか!」

「えっ!? ええぇっアタシ……ですか?」


 ターナさんは困惑していた。


「アタシなんて少し腕が良いだけのただの鍛冶屋だったのに……もっといい腕の職人ここならいるんじゃないの?」

「いいえ。今の時代、古代の金属、ゾルマニウムやオリハルコンを加工出来る職人は誰一人残っていません。」


 それを聞いたターナさんは少し腕を組んで考えごとをしていた。


「わかったよ。アタシが知るとーちゃんに教えてもらった技術、アンタらに教えてやるよ!」

「おお、魔技師スミソニアンの末裔の娘よ。その技術、是非とも御教授いただきたい……!」


 そして魔技師見習いの鍛冶屋たちがターナさんの元に集まった。

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