767 アルカディアの鏡板
真っ暗な外の中、ボク達は飛行艇グランナスカでアルカディアを目指した。
少しすると、ボク達の目の前に金属で出来た巨大な島、アルカデイアが姿を現した。
「まさか……ユカ、あれがアルカディアなのかい?」
「はい。あそこに今から行くんです」
ターナさんは初めて見るアルカディアに目を輝かせていた。
どうやらパレス大将軍の事は、少し心の傷が癒えたらしい。
「すげーな。アレがユカ達の言っていたアルカディアかよー」
「おに……、カイリ、子供みたいにはしゃがないの。みっともない……」
ターナさんもだが、カイリさんとマイルさんもこのアルカディアを見るのは初めてだ。
まあ初めての人がこの巨大な金属の島を見ればそりゃあビックリもするだろう。
「しかし信じられないねェ。こんな巨大な島を昔の人達が作っていたなんてねェ」
「ここって、エントラ様の生まれるずっと昔から存在したんですか?」
「そりゃそうでしょうねェ。妾は言ってもまだ千歳になってないからねェ」
普通に考えれば千歳生きる人間なんているわけないんだが、大魔女エントラ様は一体どういう風にすればあの若さと美貌を保てるのだろうか……。
「でもどう見てもそんな年には見えませんよ、もっと……二十中盤か……後っ……ぜ、前半に見えますよ」
つい後半と言いかけてしまったが、確かに彼女はどう見ても二十代半ばにしか見えない。
「嬉しい事言ってくれるねェ。後半でもよかったんだけどねェ。ユカなら可愛いから許しちゃうからねェ」
そう言って大魔女エントラ様はグランナスカ操縦中のボクの後ろから大きな胸を頭に当ててきた。
「あっあわわっあわわわわっ!!」
「あら、何を照れているのかしらねェ……」
「ままま……前、前が見えないっ!」
「えっ!?」
ドゴゴガァアアーンッ!
やってしまった。グランナスカはボクが少し目を離したすきにアルカディアの大型の鏡のような板を粉々に破壊してしまった。
「何だ!? 何事だっ!! 敵襲か!」
アルカディアの自警団があっという間にボク達を取り囲んだ。
「あれっ……あれは黄金の……グラン、ナス……カ? ユカ様??」
ボク達は取り囲まれた自警団に連れられる形で、全員ジバ総司令の元に連れていかれた。
「ユカ様、いくら創世神クーリエ様の御使いと言えど、やって良い事と悪い事の限度があります!」
「すみません……」
どうやらボク達はグランナスカでエルドラドの天候管理システムの大鏡をぶち壊してしまったようだ。
「まあどうにか残った鏡で天候コントロールは可能ですが、これはちょっと許せないレベルですよ」
ボクはあの場所に行ければ鏡を直せるのではと考えた。
「ジバ総司令、すみませんがボクをあの壊れた鏡の所に連れて行ってもらえますか?」
「現場検証ですか……まあ、良いでしょう」
ボク達は自警団に後ろに付かれる形で大破した大鏡の元に向かった。
どうやらここは人口重力というものが働いているらしく、ボクは逆さまや垂直の状態で
よし、ここが地面と同じ扱いになるなら、ボクのスキルで……!
ボクは壊れていない鏡の上を歩き、大破した鏡の前に戻ってきた。
「目の前の壊れた鏡の床を元の形にチェンジ!」
ボクのマップチェンジスキルは、大破した大鏡を破損前のキレイな形に戻すことが出来た。
それを三回四回繰り返すと、アルカディアの鏡は前よりも綺麗な形で修復が完了した。
「し、信じられない……!」
自警団の人達はボクを見て驚いていた。
だがそれは自警団の人だけでなく、離れた場所から映像を見ていたジバ総司令も同じ事だった。
「ユカ様、どうぞこちらにお越し下さい。総司令がお呼びです」
アルカディアの鏡の板を全部きれいにしたボク達に対し、ジバ総司令は無罪の判決を出した。
まあ無傷と同じ状態に戻せたなら良かった良かった。
だけど、エントラは後でこっぴどく叱る必要がありそうだ。




