766 再びアルカディアへ
次の日、出発準備を終わらせたボク達は飛行艇グランナスカに乗り込んだ。
グランナスカには一応の一週間分の食事を人数分用意したので、そんなに時間はかからないで着けそうだ。
「ユカ様、空帝戦艦アルビオンは確かに消滅しました。ですが公爵派がこれで全て壊滅したわけではありません。私は私で独自のルートを使い彼等の動向を探ってみる事にします」
「ユカ殿、吾輩達もいったん国に戻るですぞ。魔族の動向は我が国にも何かしてくる可能性があります故……」
ゴーティ伯爵は公爵派の動向を探ってくれると言ってくれた。
リョウカイさんとリョウクウさんはワープ床を使い、ミクニに直接戻るようだ。
ボク達はボク達でアルカディアで戦力の増強をしなければ、もう空帝戦艦アルビオンは無いとはいえ、――ウルティマ・ザイン――、――オルビス・ザイン――は健在だ。
もし公爵派貴族がそれらの怪物を手に入れたら地上の武器ではとても勝ち目がない。
だからボク達はオリハルコンを生成できるというアルカディアに向かう事になる。
アルカディアは高い闇――ソウイチロウさんが言うには宇宙空間というらしい――に存在する古代の民の末裔の住む空飛ぶ島だ。
ターナさんもどうやらこの島の末裔だそうなので、そこに行けばオリハルコンの事とかも分かるかもしれない。
「伯爵様、それでは行ってきます!」
「ユカ様、ホーム、ルーム、皆様、お気をつけて!」
グランナスカはボク達を乗せ、ゴーティ伯爵の城の前の広場から飛び立った。
その後凄いスピードで飛び始めたグランナスカはあっという間にゴーティ伯爵の城を後にした。
◆◆◆
「いやはや、本当に凄いものですね。アレが敵でなくて本当によかったと思いますよ」
「ゴーティ伯爵様……」
「おお、ゴテン様。いかがなされましたか?」
「ユカ様は行ってしまわれたのですね……。お礼を言いたかったのですが」
「ゴテン様、彼は……戻ってきますよ。もし何でしたらその時にお礼を言えば、よろしいかと」
パレス大将軍の妻ゴテンは目じりを潤ませながらゴーティ伯爵に話した。
「そうですわね、私は結婚して巫女の力を失ってしまいましたが……あの方々ならきっと魔を払ってくれると思います。薄々ですがそういう未来が見える様な気がします」
「そうですね。彼等ならきっとやり遂げてくれるでしょう」
「はい、あの方々はこの世界を救う為に現れたのでしょう。ユカ様の後ろにはもう一人の人物が見えます……」
「はて、もう一人の人物とは?」
ゴーティ伯爵には見えていないが、どうやらミクニの元巫女のゴテンにはユカの後ろにソウイチロウが見えていたようだ。
「大丈夫ですわ。その方は敵ではありません。むしろユカ様を見守る親か兄弟みたいな人でしょうね」
「そうですか、貴女にはそれが見えるのですね」
ゴーティ伯爵とゴテンはユカ達の飛び去った方角をいつまでも見続けていた。
◆◇◆
ボクは飛行艇グランナスカの操縦桿を握っていた。
『ユカ、長距離ワープのやり方は覚えているか?』
『はい、足元のペダルを思いっきり踏み込んでからレバーを横に倒すんですね』
ボクはソウイチロウさんに教えてもらった長距離ワープのやり方をおさらいしていた。
この長距離ワープが出来れば、あの空気の壁を通らなくて済む。
古代の人達が地上と宇宙を行き来していたのはこの方法を使っていたのだろう。
「いくよっ! 長距離ワープ開始!」
ボクがレバーを横に倒し、足元のペダルを目いっぱい踏み込むと、グランナスカの全身が虹色に輝き出した。
「みんな、移動の際のショックに気を付けてっ」
凄まじい衝撃がボク達の乗るグランナスカに襲い掛かる!
どうにかその衝撃が収まった時、ボク達は高い闇――宇宙空間――に到着していた。




