765 ゴーティ伯爵の裁き
新作始めました。
ロボアニメの超絶不人気悪役に転生してしまった現在のロボエンジニアが四十三話先の死亡フラグ回避の為に奮闘するロボ作品です。
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「ではユカ様達はそのアルカディアに向かわれるのですね」
「はい、そこならボクのこの剣も修理できると思いますので」
ボクはゴーティ伯爵に新生エクスキサーチを見せた。
「立派な剣ですが、確かにあちこち刃こぼれが見えますね。これは一体……っって!?」
ゴーティ伯爵が驚いている。
「ユユユユユ……ユカ様、それってひょひょひょっとして――オリハルコン……なんじゃないのですか!?」
ゴーティ伯爵が驚いていた理由は、ボクの持っている剣がオリハルコンで出来ていたかららしい。
「はい、そうですが」
がたっ!
ゴーティ伯爵が椅子から滑り落ちた。
「イタタタタ……もう、驚かさないで下さいよ。成程、ユカ様の剣がオリハルコンなら確かにパレス大将軍と戦って勝ったというのも、バロールを倒したというのも納得です」
ゴーティ伯爵は冷静を装うとしているが、今度は仕事中の羽ペンを上下逆に持って羽根をインクに付けている。
まあオリハルコンって物がどれだけ貴重か分かっていたら、こうもなるだろう。
「父上、僕の剣も見てもらえますか」
「これは……立派な剣ですね、ってこれも! オリハルコンッ!?」
もうゴーティ伯爵の顔が面白おかしい百面相になっていて、ボク達は笑いをこらえるのに必死だった。
「こここれは……ホーム、この剣はどうしたのですか?」
「そこにいるターナさんがボクの魂の救済者を修復してくれたんです。でもこれにさらに改造を加え、両手剣の大剣にするみたいです」
「伯爵様、初めまして。ターナ・スミソニアンと申します」
「おお、貴女はあのスミソニアン主任の娘ですか」
どうやらゴーティ伯爵はターナさんの父親の事を知っていたらしい。
「彼も不本意だったでしょうが、空帝戦艦復活は皇帝陛下のご命令でしたから……しかしその後皇帝陛下が破棄した計画を継いだのがテリトリー公爵だったわけです。私は彼を止める事が出来ませんでした、申し訳ないと思っております」
ゴーティ伯爵がターナさんに頭を下げた。
「そんな、伯爵様。もう終わった事ですから……。――でもアタシも正直父さんの気持ちが良く分かってしまったです。パレスさんに連れていかれた空帝戦艦アルビオン、最初はアタシ、仕方なく連れていかれたはずだったのに、あの機関部を見ているとつい自分でいじりたくなって……最後にはその魅力に取りつかれてしまいました……」
確かに一度目にボク達が空帝戦艦アルビオンからターナさんを助け出そうとした時、彼女はボク達を拒否した。
アレには罪の意識で戻れないというものも確実にはあったのだろうが、それよりもあの機関部の古代文明の魅力に取りつかれて離れたくないというものもあったのだろう。
「それで、今はユカ様達に助けられてここにいるわけですね」
「はい、伯爵様。私は知らなかったとはいえ、空帝戦艦アルビオンの技術主任として人々を恐怖に落とす事に加担してしまいました。この罪、いかなる処分も覚悟しています……」
そんな、ターナさんは結局誰一人殺していないんだから、罪になるなんてのはおかしい!
ゴーティ伯爵は腕組をし、眼を閉じて何か考えていた。
「そうですね……貴女は知らなかったとはいえ、空帝戦艦アルビオンを整備し、北東の村を焼き払った。もしあの村の住人が避難してなければ数千人以上の人が亡くなっていたでしょう……」
「その通りです……」
「ですが、あの村にはパレスから私宛の避難指示が出ていた。その為貴女のやった事は無人の村の建物を跡形もなく消滅させるだけに留まった……よって、貴女に対する罪は……」
やはり村を吹き飛ばしたのは罪になるのか。
「ユカ達に同行し、アルカディアに行きなさい。そこで技術者としてユカ様達の為に何が出来るのかを自分で考えるのです、それこそが、貴女がするべき償いだと思ってください」
ゴーティ伯爵の裁きに対し、ターナさんは嬉しくて涙を流していた。