763 祝賀パーティの食事
ゴーティ伯爵の城ではボク達の帰還を祝い、豪華な祝賀パーティーが開催された。
ここ最近ずっと出先で食事をしていたが、これだけ豪華な食事は久々といえる。
豚や牛の丸焼きがドーンと置かれたのにはびっくりしたが、これを貴族焼きにしているので味はかなりのものだ。
貴族焼きとは旧ヘクタール領で考案された料理で、牛や豚、鶏などのお腹を切り裂き、その中に穀物や野菜などを詰めて戻した後、藁等で包んで焼いた料理だ。
この由来は、貴族が貧しい人に食べさせない見せしめとしての家畜への穀物や野菜を食べさせた後にその家畜を料理するのと、ヘクタール男爵が藁のマントを領民にかぶせて火あぶりにしていた事を合わせ、家畜の中に穀物を入れて藁で焼くという料理法として確立したものだ。
名前は何だが……これがかなり美味しいので、今や帝国の各地に広まっている料理方法だ。
旧バレーナ村の自由都市リバテアでは鯨の中に、リゾート男爵の領地では大型のトカゲの中にと、各地でバリエーションも増えているようだ。
「美味しいですわ。これならいくらでも食べられますわ!」
「ルーム、はしたないからやめとこうよ……」
「魔法使いはエネルギーを大量に消費しますのよ、だから食べれる時に食べてマナを回復させる必要があるのですわ」
「ハハハ……そういうなら、止めないけど……それじゃあお嫁の貰い手がないよ」
レジデンス兄妹は二人で食事しているようだ。
エリアさんは肉よりも野菜を食べている。
だからといって菜食主義というわけではなく、単に好みの問題らしい。
「ユカ、食べてるか? お前の為に村でも一番の牛を連れてきたんだぞ。今日潰したばかりの新鮮な肉だからな」
父さんが自慢げに牛の事を話している。
まあ今や父さんはコミエンゾ村の村長で男爵だ。
前線に出て戦う事はもう無いのでむしろ内政で牧畜を中心に始めたらしい。
「ユカの連れてきた避難民の数名かはもう既にウチの村で働いてもらっている。彼等のおかげで牧畜が捗ってるからな、今日の肉はそのお礼だ」
そう言われると食べないわけにはいかない。
ボクは出された料理を次々に食べていた。
「ユカ様、、いかがですか? 私の主催したパーティーは、楽しんでいただけていますか?」
「はい、皆さんとても楽しそうで良かったです!」
「それは良かったです。ユカ様、明日皆様とお話がありますので、今日はゆっくり我が城でお休みください」
「はい、わかりました。伯爵様、ありがとうございます」
パーティーは夜遅くまで続き、ボクはもう食べれないくらいまでお腹いっぱいにしてベッドに倒れ込んだ。
そう言えば明日の朝、ゴーティ伯爵が話があるって言ってたけど、どうしたんだろう?
ボクはそんな事を考えながら、いつしか眠りについていた。
次の日、ボク達はゴーティ伯爵と応接間で話をした。
「……そうでしたか、パレスは最後まで戦ったんですね」
「しかし許せないよな、そのテリトリー公爵って奴は!」
「ユカ様、それではテリトリー公爵は自らの派閥を見捨てて逃げ出したというのですね」
「はい。他の貴族を足蹴にし、自分だけが小型の飛行艇で逃げました」
テリトリー公爵は公爵派の一番上にいる人物だ。
現在の国王の母親の弟で、現在皇帝とは別派閥のトップだ。
空帝戦艦アルビオンに乗っていた公爵派貴族はほぼ全員死亡した。
この事で公爵派貴族は壊滅し、帝国における彼等の地位は地に堕ちたと言える。
「ですが何か嫌な予感がするのです。ユカ様、どうかこれからもよろしくお願いできますか?」
「はい、ボク達に出来る事でしたら!」
「ありがとうございます。私にご協力できることでしたら何でもお申し付け下さい」
「そんな、申しつけるなんて、ボクには……」
「いいえ、貴方はこの国の救世主です。貴方のおかげでこの国は救われたのです」
何だかそこまで言われてしまうと、ボクは少しむず痒い気持ちになってしまった。