75 巨大な黒い魔獣
私は腰の遺跡の剣を構え、モンスターの群れに深く切り込んだ! 一閃で数体の盗賊だったものがバラバラに吹き飛んだ、レベル44からすればこんな連中ザコでしかない。
「ユカ様……こんなに強かったんだ」
「私ももっと努力しないと……足手まといになりますわ……」
レジデンス兄妹が本気を出した私の戦いを見て驚愕していた。
「ホーム! そいつを倒してくれ! そいつがワープ床に逃げようとしてる!」
「ユカ様! 分かりました!」
勝ち目が無いとわかった途端に逃げ出そうとした奴がいた。知性が無くなっても本能で危険を感じたのだろう。
「レジデンス流、剣技……縦横斬!」
ホームも慣れてきたようだ。モンスター退治でもうレベル20近くまでには成長している。普通の冒険者からすればもうB級からA級と言える強さだろう。
「もう遠慮は無しですわ! 私の最大必殺魔法……サンダァーーー・ブレーイク!!!」
ルームが自身の最大必殺魔法を解き放った! この威力を見るに今までこれは流石に危険だと自制していたようだ。この威力は……シャレにならない!
私がマップチェンジで人質を土壁で防護していなかったら一緒に巻き込んで大惨事になっていただろう。数十匹の盗賊の成れの果てが消し炭になった。
「やったか!?」
……本当にやったようである。この祭壇跡の大広間に盗賊だったものはもう残っていない。そう思っていた時!
「GAAAAAAAAA!!!」
凄まじい地を揺るがすような咆哮が轟いた! 嫌な予感がする、ボスの登場か?
「貴様ら……よくも好き放題にやってくれたな! ワシの魔獣の餌にしてくれる!!」
どうやらコイツがボスのようだ、その隣には相撲取りよりもデブな大男が肉をくいながら現れた。
「僕は『ゴーティ・レジデンス伯爵』の息子、見習い騎士のホーム・レジデンスだ! 覚悟!」
「私は将来の大魔導士、ルーム・レジデンスですわ! さあ覚悟あそばせ」
……毎度思うが、彼らは鎌倉武士なのか? 必ず名乗ってから戦おうとしている。
まあそれが悪いとは言わないが、なんだかやはりむず痒い物を感じる(笑)。
「さあ、ユカ様もどうかあの卑劣な者どもにそのお名前をお伝え下さいませ!」
もう大きなお世話である、しかし期待されたからにはやるしかないか。
「ボクは……国一番の戦士長、『ウォール・カーサ』の息子、『オーガースレイヤー』のユカ・カーサだ!」
「小生意気なガキどもが! 全員殺して邪神の生贄にしてやる!!」
魔獣使いが杖を掲げると凄まじい咆哮を上げて真っ黒な魔獣が姿を現した! 数メートルの巨体だ。エリアの高さまで平気で攻撃できるのでこのままでは危険だ!
「エリアのいる床を元の高さにチェンジ!」
私はエリアのいた床を元の高さに戻し、彼女を庇うように立った。
「ユカさん! 女と子供は全員無事外に出しましたよ!」
良いタイミングでフロアさんが戻ってきてくれた。
「フロアさん、獣使いならあの獣を操る事は出来ますか?」
「いや、無理だ……アレはもう魔獣でしかない」
獣は操れても魔素に侵された魔獣は操れないと言ったところか……。
「ユカ……私に任せて! 少し休んだからもう大丈夫!」
「エリア……」
「あの子……苦しんでる。私が助けてあげないと」
エリアが強い意志で私の目を見た。自分の力であの魔獣を助けたいと言っているのだ。
「エリア……無理はしないで、ボクが君を守るから!」
「わかった……聖なる力よ、邪悪なるものに侵された獣を闇の力から解き放ちたまえ! レザレクション!!!」
エリアの周りの白い光が集まり、一直線に魔獣の身体を包み込んだ。
「GYAAAAAAAOOOOOOOOO!!!」
エリアのレザレクションのスキルで魔獣の黒い毛皮が白い光の力でどんどん色が薄くなっていった。