756 村人達との別れ
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「ガ……アァア……余の、身体が崩れ……る」
今度こそ魔王ゾーンの最後だ。
奴は内部からの崩壊により、その姿を保つ事が出来なくなっていた。
「だが、余は……邪神は不滅。必ずや復活して……や……る」
俺様は小さな欠片になり消滅する魔王ゾーンを見下ろしていた。
フン、その時はまた俺様が吹き飛ばしてやる!
そして、ゾーンの気配が消え、辺りは静寂に包まれた。
※……だが、この時僅かに残った欠片を盗賊のリーダー、アジトが拾い、不死身の力を手に入れる事になる。
それが不死身の盗賊ギルドリーダー、アジトの不死身スキルの秘密だった。
ゾーンが消え去り、魔族達は姿を消した。
「魔族達は逃げたようだねェ。多分魔界への門で逃げたんだろうねェ」
「そうか、お前はそれがわかるんだな」
「まあねェ。アタシの一族は門の一族と言って異界との門の番人だからねェ」
成程、この女は普通の人間とは違った種族みたいなものだったらしい。
それならあのとてつもない魔力も納得だ。
「終わったね、ボク達は今度こそ魔王を倒したんだ」
「そうですわ、これでようやく安心してお風呂に入れる毎日に戻れますわ」
「テラスちゃんは本来お嬢様だからねェ。そうね。早く帰りましょう」
「これで俺様もフワフワも会えるか。さあ、急いで帰ろう!」
俺様は一日も早くあの獣人の少女フワフワに会いたかったので自らバシラ達を背中に乗せ、村を目指した。
「みんな、帰ってきたよ」
「おお、バシラ。よく帰ってきてれた! みんなお前達の帰りをまっておったんだぞ。魔王は倒せたんじゃな」
「うん。ここにいるみんなのおかげだよ」
そう言ってバシラは俺様を見上げた。
うむ、人に褒めてもらうのも案外悪いものでは無いな。
ただ恐れられるより、何だか気持ちが落ち着くようだ。
「ドラ……ヘックスさん。オラ、アンタの帰りを待ってただ」
「フワフワ、元気だったか!?」
「ウン、この村の人達、オラに優しくしてくれた。だからオラ安心してヘックスさんの帰りを待てただ」
そう言ってフワフワは愛くるしい笑顔を俺に見せてくれた。
彼女は俺様が魔王退治の旅に行っている間にかなりの美人になっていた。
そんなに時間は経っていないはずだが、女の成長というのも早い物だなと俺様は感じた。
「フワフワちゃんはもう立派にこの村の一員として頑張ってくれてたわい。ヘックス様、フワフワちゃんともうここを離れるのですか?」
「当然だ……と言いたいところだが、どうやらフワフワがお前達ともう少し一緒にいたいらしいな、だから彼女の気が済むまでは待ってやる事にする……」
「アンタって何時でも偉そうだねェ……」
「当然だ。俺様は世界最強の黒竜王ヘックス様だからな!」
俺様とエントラのやり取りを見ていた村人達が笑っている。
まあ恐れられるだけの存在よりは、こういうのもの悪くはない。
「安心しろ、フワフワがお前達に会いたいといった時は、俺様がここに連れて来てやる」
「おお、それはありがたいですじゃ。フワフワもすっかりこの村の子供達に懐かれておりますからな」
どうやら俺様達が魔王退治に向かっている間、フワフワは村の子供の世話をしていたようだ。
「はい。オラ、昔住んでた村でも子供達の世話をしてただ、だから子供の面倒見るのは得意だったから楽しかっただ」
「フワフワねーちゃん、また遊びに来てくれよな」
「ああ、また来るだ」
フワフワが子供達との別れの挨拶をしている。
「ヘックス、君のおかげで魔王を倒すことが出来た。本当にありがとう」
「バシラ、俺様も楽しかったぞ。お前達の事は決して忘れぬからな」
そして数日後、俺様はフワフワを背中に乗せ、村を離れた。
俺様とフワフワは二人で住める場所を探して旅に出たのだ。




