755 魔王の崩壊
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俺様は魔王ゾーンの塊を睨み、咆えた。
「グォオオオゥッ!」
俺様の叫びはゾーンを形作っていた黒い塊を吹き飛ばした。
その中心にあったのは、あの三つ首の邪竜が分離した時の黒い小さな塊だった。
「それが貴様の本当の姿か、こけおどしがっ!」
「カッカッカッカ……見た目で余を判断するのか……まだ甘いな」
「ほざけ、吹き飛ばしてくれるわ!」
俺様はブラックブレスをゾーンの核に放った。
これで跡形もなく消えるだろう。
そう思っていた俺様だったが、ゾーンはその場に残っていた。
「何故だ、あんな小さな欠片が……」
「カッカッカッカ……それは余が絶対の反質量で出来ているからだ!」
「反質量?! 何だそれは!」
「マズいねェ……そりゃあちょっとコイツとは相性最悪だわねェ」
「エントラッ! 何か知っているのか!?」
反質量? 一体それは何だ!
何かはよくわからんが、エントラはかなり気まずそうな顔をしている。
彼女は何かを知っているのだろうか?
「アレに対しては物理攻撃、質量攻撃は一切の無駄って事だねェ。つまりアタシやヘックスの攻撃は一切魔王ゾーンには通用しないってわけだねェ」
「何だと!? それではどうやったら倒せるというのだ!」
魔王ゾーンには一切の攻撃が効かないというのか!?
それでは一体どうやって戦えばいいというのだ。
「そうねェ。反物質を内部崩壊させるやり方、内部から質量を与えるのが良いねェ」
「そのやり方、お前には分かるのか?」
「んー、あまり自信は無いけどねェ。あの魔王が反物質だというなら、それと同量の物質のエネルギーを中から叩きつける事で中和、崩壊ってやり方かねェ」
うーむ、イマイチよくわからんが、その方法は可能なのか?
「それで、それをやる方法はあるのか?」
「まあテラスちゃんの魔力なら可能かねェ」
「テラス、頼む。力を貸してくれ」
「わかりました。わたくしの力、お貸し致します」
テラスは愛用の杖を掲げ、小さな光の塊をゾーンの核に向けて放った。
「カッカッカッカ……そんな小さな塊で余を倒せると思っているのか、見くびられたものだな……」
だが魔王ゾーンはその後苦しむことになる。
「ぐがぁッ! な、何故だ……何故余にダメージを……」
「それはアンタの力と正反対の力を合わせたからさねェ。さあ、今度こそ消えるんだねェ!」
「ふざけるな。この程度、余の力で……」
「マズいっ、反物質が大きくなっている。これじゃあテラスちゃんの魔法が飲み込まれてしまうねェ!」
それはマズい! それではせっかくのテラスの魔法が無駄になって飲み込まれてしまう!
「テラスッ! ボクの剣なら、このオリハルコンの剣ならアイツを倒せるかもしれない!」
「カッカッカッカ……、無駄だ、余には一切の攻撃は効かぬ」
「それなら、これでどうだぁぁあ!」
バシラの構えた剣から光が放たれた。その光はテラスの魔法に吸い込まれ、ゾーンに飲み込まれそうだった光の塊が大きくなっている。
「なっ! 何だと!?」
「ボクの全力をお前にぶつけてやる! 喰らえぇぇ!」
バシラのオリハルコンの剣は虹色に光り輝き、大きな光を放った。
「くっ! 余の負の力で消し去ってくれるわ!」
「そうはさせないねェ! バシラ、アタシの力も使うんだねェ!」
エントラがバシラの剣に触れると光はさらに大きくなり、更なる力を発揮した。
「バシラ、俺様の魔力も使え。アイツに全力をぶつけてやれ!」
「みんな、ありがとうっ! よっしゃああ! いくぞぉおおおっ」
バシラの光は俺様とエントラの魔力も受け取った事でさらに巨大化し、テラスの光に吸収された。
「これが吸収できないボク達の全力の力だぁあああ!」
「なっ! 何だとぉ!? 余が、崩れる……だ……と」
魔王ゾーンは内側からの光で力を中和され、内部から崩壊を始めた。




