754 仲間……そして新たな絆
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獣人の少女フワフワをバシラの村に預けた俺様は、彼等と共に魔王を倒す為の旅に出た。
バシラ達は俺様の恩人だ。
邪神ダハーカの呪いで永遠の眠りに落ちてしまったフワフワを俺様は助ける事が出来ず諦めていた。
だが、偶然とはいえ俺様を起こしたバシラ達は、俺様との戦いの末に和解。
その後テラスがフワフワにかかった邪神の呪いを解いてくれた。
俺様は数百年ぶりに目覚めた彼女の声を聞く事が出来たのだ。
今まで俺様の周りにいたのは敵だけだった。
だが今の俺様には俺様の帰りを待つ獣人の少女フワフワや一緒に戦う仲間のバシラ達がいる。
今まで俺様は孤独な中で心を持たずに暴れていた。
そんな俺様に温かい心を教えてくれたのが、吹けば飛ぶようなちっぽけな獣人の少女フワフワだったのだ。
彼女との会話は荒んだ俺の心を癒してくれた。
そしていつしか俺様は彼女と一緒にいつまでもいたいと思うようになった。
しかし、それを邪魔したのは邪神ダハーカと名乗る三つ頭のトカゲだった。
俺様はダハーカを倒し、フワフワを生贄から守る事が出来たと思っていた。
だが邪神ダハーカがかけた呪いはフワフワを永遠の眠りに落としてしまったのだ。
でもそれももう昔の話。
これから俺様は、仲間の為に戦おうではないか!
さあ、かかってくるがよい!
「フン、この俺様に立ち向かおうとは、数千年早いわ!」
俺様のブラックブレスは魔族の群れを一瞬で消滅させた。
「フン、こんなものか。魔族とやらもだらしないな」
「そうねェ。この程度ならアタシも余裕だねェ」
エントラ、コイツは何故か事あるごとに俺様に突っかかってくる。
まあ仲間なのでバシラの顔を立てて攻撃する気は無いが、気に食わん。
「ほう、それなら次のモンスターの群れは貴様一人で倒してみろ」
「キサマって、アタシにはエントラって立派な名前があるんだけどねェ! それじゃあ行くよ、ボルガニックフレアッ!」
ドゴォオオオオンッッッ‼
癪に障るが、このエントラ、言うだけではなく本当に実力があるので気に入らん。
これが口だけのバカ女ならバカにも出来たものなのだが、なまじ実力があるだけにバカにするわけにもいかん。
下手にバカにすれば俺様の器が小さいと言われかねん。
「もう、エントラもヘックスさんも張り合わないで下さい」
「お。おう。それはすまなかった」
「そうねェ。アタシも言い過ぎたねェ」
俺様はテラスには頭が上がらなかった。
なんせフワフワの呪いを解いてくれたのは彼女だったのだから。
俺様はここで折れる事で、初めて出来た仲間との絆を大切にしようと思った。
「みんな、もう少しで魔王の本拠地だ! 行くぞっ」
「オウ、任せろ!」
俺様達は魔王の城に入り、襲い来るモンスター共を次々と蹴散らした。
「魔王! どこだっ ボクが相手だ!」
「ほう、貴様ら……人間か。何やら目障りな黒トカゲもおるみたいだがな」
「貴様が魔王か⁉」
「左様、余が魔王ゾーンだ……」
ゾーンと名乗った魔王はマントの内側に目だけが光る不気味な巨体の怪物だった。
「だが無駄な事、余には一切の物理、魔法攻撃が通用せぬのだ、カッカッカッカ……」
魔王は不気味な笑いを上げていた。
「行くぞっ! この剣はお前の闇を切り裂く剣だ!」
「何だと!?」
「うぉおおおっ!」
バシラの掲げた剣は、魔王ゾーンの周りを包んでいる黒いモヤを吹き飛ばした。
その内側にあったのは、意識を持った黒い塊だった。
「クッ……余の身体を吹き飛ばすとは……貴様ら、許さんぞ……」
「その声……聞き覚えがある。貴様、まさかダハーカか!?」
「カッカッカッカ……余はダハーカにあってダハーカにあらず……だが、余の正体を知る貴様……何者だ!」
「俺様の名前は黒竜王ヘックス。かつて貴様を倒した者だ!」
どうやらこの魔王ゾーンとやらは、あの戦いの際に三つに分かれた邪神ダハーカの一部だったようだ……。




