747 三人組との対決
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「答えろ。俺様の眠りを妨げたのは貴様等か……?」
「えェ? な、何なのさねェ。いきなり現れて……!」
「俺様は眠っていた、それを起こしたのは……貴様か!」
俺様は小さい奴ら三人に起こされてしまった。
せっかく彼女を守り、眠り続けようとしていたのにたかだか数百年で目を覚まさせられたのだ。
寝起きで機嫌の悪かった俺様は、何だか偉そうな態度の女に問いかけた。
「オイ! 俺様の尻尾を踏んづけたのは貴様かぁ!?」
「そこまでデカい声で叫ばなくても聞こえるってねェ。そうよ、何かわからなかったからねェ、まあ謝るから許してってねェ」
「それが謝る態度か! ふざけるな!」
この女、俺様の尻尾を踏んでおきながらこの態度は何だ!
「あーもううっさいねェ、これで頭でも冷やすんだねェ! アブソリュートゼロテンパルチャー!」
「ぬ、ぬおぉおおお!?」
俺様の顔めがけ、このバカ女は氷魔法をぶつけてきやがった!
こいつ、俺様を怒らせたな! 許さん。
「ハッ、これで少しはアタマが冷えたかねェ」
「エントラ……起きたばかりのドラゴンにいきなりその態度は良くないと思うの……」
知らん、コイツらもう絶対許さん。
獣人の少女の手前、俺様は他者を傷つける気は無かったが、今回は相手からケンカを売ってきた……これは舐めた態度にきちんと反応してやらないといかん。
「貴様ら……よほど死にたいようだな! それでは望み通りにしてやろうっ!」
俺様は口から黒いブレスを吐き出した。
吹けば飛ぶような人間程度、この攻撃で十分だろう。
これでコイツらを吹き飛ばしたら俺様はもう一度寝る。
「バリアフィールド!」
「何!?」
この女、見た目に反して高レベルの防護魔法を使って残りの二人を庇ったのか。
「フハハハ、まさか俺様のブレスで吹き飛ばないとはな。これは数百年ぶりに本気を出す必要がありそうだ!」
「フン、チョット尻尾を踏んだ程度で怒るような器の小さなトカゲに負けるわけ無いってねェ」
この女、世界を敵に回し黒竜王と呼ばれた俺様をトカゲ呼ばわりだと、マジで許さん。
「女……よほど死にたいようだな。なら望み通り殺してやろう!」
俺様は爪で女に襲いかかった。
だが、それを弾いたのはその手前にいた男の戦士だった。
「何をする。邪魔をするなら貴様も殺すぞ」
「仲間に手を出せるわけにはいかない! それが例え伝説の黒竜王だとしてもッ‼」
「ほう、貴様は俺様が伝説の黒竜王ヘックス様だと知った上で戦いを挑もうと言うのだな!」
「当然だ! 仲間の為に命をかけるのが戦士だ!」
コイツは仲間の為に命を懸けると言っている。
そう言えば俺様も邪神ダハーカ相手に獣人の少女を守る為にそんな事を言ったような気がするな……。
「バシラ、私が援護します。エントラは強力な魔法で黒竜王をけん制して!」
「わかった! キミ達には手出しをさせないよ」
「強力な魔法ねェ。まあアレでもやってみるかねェ」
ほう、この三人……協力して俺様と戦おうと言うのか。
逃げるつもりなら見逃してやろうと思ったが、そういう事なら全力で戦わせてもらおう。
しかし俺様も丸くなったものだ、以前なら話も聞かずに最初からブレスを吐き出していただろう。
これも俺様があの獣人の少女と一緒にいたからだろうか、ある意味の成長とでも言えるのかもな。
「ほう、貴様等は逃げずに俺様と戦おうと言うのだな……逃げるなら見逃してやるつもりだったが」
「仲間を守る為だ! ボクは逃げたりはしない!」
「私も、みんなと一緒だもん」
「そうよねェ。ここで逃げるのはアタシのプライドが許さないんだよねェ」
何だか一人だけ言っていることが浮いている様な気がするが、俺様と戦うと言うなら相手してやる。
「さあ、かかってくるがよい。世界を敵に回した黒竜王ヘックス様の力、見せてやろう!」




