739 ワガママに翼の生えたドラゴン
どうやらボクがパレス大将軍との戦いで放った一撃は、地平線の彼方の見えない先にいた黒竜王ヘックスを起こしてしまったらしい。
大魔女エントラ様が言うには黒い光のブレスは黒竜王ヘックスの放った攻撃で間違いが無いようだ。
あの黒い光のブレスはいくら満身創痍だったとはいえ、全身をオリハルコンで作られた古代ゴルガ文明によって作られた巨大戦艦、空帝戦艦アルビオンを一撃で完全に消滅させた。
あの威力は下手すればバロールの破壊光線を上回るものだ。
その攻撃は飛行艇グランナスカにまで届きそうになり、大魔女エントラ様、アンさん、それにルームといったこの世界最高峰の魔法の使い手が三人がかりでバリアフィールドを張っても砕かれそうになるほどものだった。
あの場でボクがマップチェンジスキルで今いる湖の底に逃げなければ下手すればバリアの破れた場所からこのグランナスカすら消滅していたかもしれない。
なんという強さだ!
黒竜王ヘックスの強さは、魔将軍や破壊神をも上回るものだった。
あのブレスなら過去に魔王を倒したというのもうなずける。
それよりもボクの先祖や大魔女エントラ様はどうやってそんな最強のドラゴンを味方にすることが出来たのか、ボクはその方が気になった。
「あの、エントラ様。黒竜王ヘックスって一体どんなヤツなんですか?」
「そうねェ、あの黒竜王ヘックスを一言で言えば、ワガママに翼の生えたようなドラゴンというべきかねェ」
なんだその最悪の存在は!?
「アイツがどこで生まれたかは誰も知らない、ただ北東の山には地を揺るがすほど強大なドラゴンが住んでいると聞いた妾達は、通り道だったのもあってその巣に踏み込んだわけだねェ」
「そこで、黒竜王ヘックスと遭遇したってわけですか?」
「そうねェ。最初はどうも妾が尻尾を踏んだとやらで地面を揺るがして怒っていたねェ、あんな巨大な図体で頑強な鱗に包まれているのに、尻尾を踏んだ程度で地面を揺るがして怒るなんて、一体どれだけ心が狭いのかねェ」
飄々と話しているが、普通の人間はドラゴンの尻尾を踏んだと言って、ドラゴンが激昂したら太刀打ちなんてできるわけがない。
「それで怒ったヘックス相手に妾が頭を冷やせと絶対零度魔法をかけたら、更にブチ切れてしまったってわけさねェ」
いや、そりゃあ流石に黒竜王ヘックスでなくても怒ると思うが……。
というかその魔法を喰らった時点で相手が死亡してもおかしくない。
「でもヘックスはその氷の魔法を払いのけて先程の黒いブレスを放ってきたってわけだねェ。流石に妾もあのブレスは避けきれないと思ったのでバシラやテラスごと転移魔法で一旦異空間に逃げ込んで難を逃れたんだけどねェ」
そのやり方は流石に飛行艇グランナスカでは使えない方法だ。
「転移から戻ったらまぁ酷い事になっていたねェ。そこにあった山は全部吹き飛び、海すら真っ二つに割れて遠方の島が一つ消えていたくらいだからねェ」
そりゃあどう考えても勝ち目がないと思う。
というか、どうやってそんなバケモノを仲間にしたんだろうか!?
「あの……黒竜王ヘックスの強さはよーくわかりました。でもそんな最強最悪のドラゴンが何故エントラ様達の仲間になったんですか?」
「そうねェ。それは、ダハーカがいたからかねェ」
ダハーカ!
ボク達がフワフワ族の集落から離れた古代の神殿で倒した凶悪な邪神竜だ。
でも黒竜王ヘックスと邪神竜ダハーカに一体どんな関係があったのだろうか?
「あの、話が良く見えないんですけど、そのダハーカとヘックスに一体何があったというのですか?」
「そうねェ。あれは……ヘックスがロリコンだったというべきかねェ」
ますます意味不明なんだが、一体どういう話なんだろうか??




