735 ユカVSパレス大将軍 2
「パレス大将軍! もうボク達がアナタと戦う必要はありません!」
「……」
「ボク達は巨竜の島に捕らわれていたあなたの奥さん、それと子供を助け出しました。」
「それがどうした……」
それがどうした、と言われても……。
彼は奥さんと子供達を公爵派貴族に捕らえられ人質にされた為に仕方なく従っているのはもうわかっている。
だけれどもパレス大将軍はボク達の話を聞こうとはしなかった。
「それを聞いたからとて、我にどうしろというのだ。もう我の手は罪無き者達の血で染まり切っている……もう、戻れはしないのだ!」
ザワザワしていた公爵派貴族はパレス大将軍が自分達の敵にならないとわかり安心したような態度だった。
だがパレス大将軍はそんな彼等を射抜くような冷徹な目で睨んだ。
「所詮我もここにいる悪鬼共と変わらぬ。人の血を啜り生きる悪魔と変わらぬのだ……」
パレス大将軍を説得するのはもう無理みたいだ。
それに彼はみるみるうちにHPが少しずつ減っている。
それもパレス大将軍がこの船を降りようとしない理由なのだろう。
もう彼にはこのHPが尽きるまでの時間しか残っていないのだ。
「パレスさん……」
ターナさんはそんなパレス大将軍を悲しそうな目で見ている。
せめて彼女だけでもこの空帝戦艦アルビオンから助け出さないと。
「ユカよ、もう時間が無い。我と一対一で戦え。他の者には決して手出しはさせぬ。これは男と男の誇りをかけた一対一の戦いだ」
「パレス大将軍……わかりました! ボクの全力でアナタのお相手をします!」
ボクが新生エクスキサーチを握り、パレス大将軍は天宮の衝撃を握った。
この対決は一撃で決まる。
それ以上はもうパレス大将軍の体力が持たないだろう。
この戦いは彼の命を懸けた最後の戦いだ。
下手に避けたりは出来ない。
「良い覚悟だ。それではお見せしよう、我の究極絶技をっ」
パレス大将軍は天空の衝撃を構え、ボクに向かって黒い力の塊を放ってきた。
「ぐはぁっ!」
か、身体が動かない!
これは重力を操ってボクの身体を縛り付けているのだろう。
パレス大将軍は動けないボク目掛け、甲板を突き抜けて戦艦の上空高くに舞い上がった。
「行くぞ! 我が究極絶技……稲妻重力落とし!」
「くっそぉおおおっ!」
ボクはどうにかパレス大将軍の放った重力波をバロールの眼に吸い込ませ、動きを取り戻し、新生エクスキサーチを構えて天空の衝撃からの稲妻の力を加えた渾身の一撃を受け止めた。
だが流石世界最強の男と言われたパレス大将軍だ、オリハルコンで出来た新生エクスキサーチが彼の一撃でヒビが入ってしまった。
このままでは剣のヒビが広がり、折れてしまう!
ボクはバロールの眼を剣に重ね、パレス大将軍の放ってきた力の全てをオリハルコンで出来た新生エクスキサーチとバロールの眼に吸収しようとした。
だがそのあまりの力は吸い込み切れないほどの膨大な量で、ボクは思わず耐えきれずに剣を手放してしまいそうになった。
ダメだ! このまま剣を手放したら負けるっ!
ボクは全ての受け止めた力をアルビオンの側面の修理しきれていない場所から外に弾き飛ばすことにした。
「うぉおおおおおおおおおおおっっ!」
ボクの剣は虹色に光り輝き、その光は山岳地帯を切り裂き、地平線の向こうまでをなぎ払いながら切り裂いた!
その光の帯は地平の彼方までの全てを一瞬で全て大地ごと切り裂いたのだ。
「くっ! 見事……だ‼」
渾身の力を放ってきたパレス大将軍は光の帯に吹き飛ばされ、天宮の衝撃を手放して壁に激突した。
パレス大将軍とボクの対決はボクの勝利に終わった。
「パレスさんっ!」
ターナさんがボロボロにすり切れた服装でパレス大将軍に駆け寄り、その身体を支えた。
「ユカ、もう勝負はついたはずだよ。――これ以上、パレスさんを苦しめないでくれよ……」
ターナさんは泣きながらボクに懇願してきた。




