734 アルビオンVSグランナスカ
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その後、公爵派貴族達は慣れない力仕事をしながらも、兵士達と共に空帝戦艦アルビオンを飛ばす為の運用をターナの指示で働いていた。
「ほらほら、働かざるもの食うべからず。きちんと仕事しないとメシにありつけないぞ」
「はい、ターナさん!」
打たれ弱い貴族の連中はターナの鉄拳制裁によって全員が従い、空帝戦艦アルビオンが飛べるように修復作業や機関部の燃料投入等の作業をさせられていた。
パーティーの時の豪華な服は今や擦り切れてボロボロになり、男女関係なく働かされた貴族達は体中に擦り傷や切り傷、打撲等で素肌も荒れていた。
しかしここにいる者達は何故か妙な一体感を感じていた。
兵士も貴族も関係なく作業をしなければ、この空帝戦艦アルビオンは山岳地帯の低空飛行からあっという間に墜落して全員死亡だ。
それが怖い貴族はターナに渋々従っていたが、何度も全員が同じ食事をした事で少しずつ関係に雪解けが見え始めたところだった。
「そういえばコングの奴、本名は確かアールバウトだったっけ。アレも実家が元貴族のヘクタールだったけな。アイツ、貴族の生活が嫌になって冒険者になったって言ったなー」
ターナは食事をしながら貴族達の方を見て、友人の事を思い出していた。
パレス大将軍は痛む身体を抑えながら艦内に剣を突き立てて立っている。
『狂戦士』の魔法と『リミットブレイク』のスキルは、戦闘の無い今でも少しずつパレス大将軍の命を削っているのだ。
彼は長年の戦場での勘で、ユカ達との遭遇を予測していた。
「いいか、兵士達よ。もし雲海の中に黄金の鳥が見えたらすぐに撃ち落とせ」
「了解です!」
そして彼の予測通り、雲海の彼方南南東の方角から雲海を切り裂き、黄金の鳥、飛行艇グランナスカが姿を現した!
◆◇◆
ボク達は飛行艇グランナスカで北北東の空帝戦艦アルビオンを目指し、飛んでいた。
「ユカさん、見えました! アルビオンです!」
ボク達は空帝戦艦アルビオンを発見し、高速でその巨体目指して飛んだ。
空帝戦艦アルビオンからは魔法砲台の光線や、電撃、火炎等の魔道砲、実弾の鉄球などが次々とグランナスカ目掛けて放たれた。
「バリアフィールド!」
「ヒュウ、流石はエントラだぜー。やはりサークル伯爵とはレベルが違うなー」
「あら、カイリ。何か言ったかしらねェ」
「いや、何でもねーよ。流石は大魔女エントラ様だなって思ったってだけだってよー」
カイリさんが何か言っているが、今はそれどころじゃない。
空帝戦艦アルビオンを沈めないようにしないと、ターナさんとパレス大将軍を救い出すことが出来ない。
「みんな、あの甲板に着艦するよ、そこからアルビオンの中に入るから」
「おう、わかったぜ」
「了解です、僕に任せてください」
ボク達は山のような銃撃、爆撃をかいくぐり、打ち払い、跳ね除け、空帝戦艦アルビオンへと突き抜けて着艦した。
「行くぞ、出来るだけ殺さないように武器を狙うんだ」
「了解です!」
ホームさんは折れたオリハルコンの剣をオーラブレードにして兵士達の武器を根こそぎなぎ払った。
「オラー、怪我したくなきゃ引っ込んでなー!」
カイリさんは槍を振るい突風で兵士を吹き飛ばした。
どうやら前回壊れた戦艦の壁は突貫修理しているらしく、吹き飛ばされた兵士は壁に当たって床に倒れた。
「待っていたぞ、ユカ・カーサ!」
「パレス大将軍! もうあなたが戦う必要は無いんです! 奥さんとお子さんはボク達の仲間が巨竜の島から助け出しました!」
「……問答無用! 我にはもう時間が無いのだ!」
パレス大将軍はボクに向かい、天宮の衝撃を振るってきた。
だがどうも動きにキレがない。
ボクはバロールの眼を通してパレス大将軍を見た。
HP65535/9643
パレス大将軍のHPは少しずつ減り続けている。
どうやら彼は以前僕と戦った時から『狂戦士』と『リミットブレイク』の効果が切れずそのまま体力が減り続けているようだ。




