729 焼き払われた村の跡地
とりあえずパレス大将軍の事情はわかった。
やはり彼は公爵派貴族に家族を人質に取られて仕方なく従わざるを得ない状態だったのだ。
カイリ達のおかげでその人質だったパレス大将軍の奥さんと子供達は古代の巨竜と大量の大海獣の出現する島から救い出すことが出来た。
公爵派貴族が絶対の自信を持っていたのはこの島にもし入り込んだとしても大海獣や巨竜に勝てるだけの人間が存在しないと思っていたからだろう。
だが、カイリさんもマイルさんもリョウカイさんやリョウクウさんも全員が魔将軍や大量の魔族と戦った経験者だ。
つまりは通常の巨大モンスター相手では普通の人間に勝ち目が無くても、彼等ならば容易く倒すことが出来る。
ここが公爵派貴族の誤算だったと言えるだろう。
まあボク達もカイリ達のおかげで助かったと言える。
もし彼らがパレス大将軍の奥さんや子供達を助け出してくれてなければ、ボク達は今からパレス大将軍が公爵派貴族に従っている理由を探し出さなければいけない所だった。
もしそうだったとしてもパレス大将軍にもボク達にもどちらも時間が無かっただろう。
この展開はボク達にとって渡りに船だったと言える。
「さあ、パレス大将軍の件は片付いたと言える。でも問題は何故あのターナさんが公爵派貴族に従っているかだ。脅されて付いていったとも考えられないし、だからといって技師としての古代文明の魅力について行っただけとも考えられない」
ボクは何故ターナさんがあの場にいたのかの理由を考えた。
その上でボク達は一度ターナさんの工房のある冒険者ギルドの町を目指す事にした。
ワープ床を使えば簡単に移動できるかもしれないけど、今回はあえて人を下ろした飛行艇グランナスカで町に向かうことにした。
道中で何かが見つかるかもしれないからだ。
ボクが冒険者ギルドに到着すると、ハゲ三人の男達がいきなりボクに泣きついてきた。
「ユカさーん、おれたち何もできませんでした、悔しいです!」
「オイオイ、一体どういうことなんだよ?」
元ヘクタールの兵士だったハゲ三人組は一週間ほど前にこの町に帝国の兵士が現れたことを話した。
その時冒険者ギルドにはC級とB級の冒険者しかいなく、どう考えてもフル装備の帝国兵に勝てる人は誰もいなかった。
その帝国兵はターナさんの工房を見つけ出すと彼女を連れ去ったという話だったのだ。
ここにいるハゲ三人組はその様子を何もできずに見ているだけだったということだったらしい。
「オレ達がもっと強ければ、ターナさんをみすみすあんなヤツらに渡さずに済んだのにー」
「もういいよ、済んだことはこれ以上言っても何も変わらないから」
「ターナさんをさらった帝国兵は湖のある方に空飛ぶ船で向かったみたいです」
「ありがとう、そっちの方に向かってみるよ」
ボク達はグランナスカを飛ばし、帝国兵の飛んでいった方に向かった。
「どうやらここで船の修理をしたみたいだな」
ボク達が湖に到着すると、そこには食べ物の食いカスや大量の建築廃材といったゴミが山積みになっていた。
どうやらアルカディアからの太陽砲ソルブラスターの直撃を受けた空帝戦艦アルビオンはここで修理されて再び飛行を開始したのだろう。
その修理の為に魔技師の末裔であるターナさんが攫われたと考えられる。
「この近辺も調べてみよう」
ボク達は飛行艇グランナスカでこの近隣を上空から調べた。
「ユカさん、何か遠くの方に巨大な穴が見えます!」
「何だって!」
ボク達は巨大な穴があるとフロアさんの言った方向にグランナスカを飛ばした。
するとそこに広がっていたのは、巨大な何かが上から落とされたような巨大な穴だった。
どうやらここら辺は大きな村があったようだが、そこには誰一人いなかった。




