728 巨竜の島からの脱出
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オレ達はリョウクウの用意してくれた飛龍で屋敷を空から脱出し、地面を見下ろした。
屋敷の周りには大量の犠牲を払って作ったと思われる魔法陣で囲まれていて、どうやらこの魔法陣が太古の巨竜を寄せ付けないためのものだったらしい。
こんなものを作るために一体どれだけの犠牲が出たのだろうか。
あの海底の血塗られた魔法陣といい、この所業は間違いなくあのサークル伯爵という貴族の仕業だろう。
ヤツにはそれ相応の結末を迎えてもらわないと。
オレはマイルに頼んでサークル伯爵の作った魔法陣を潰してもらった。
大量のミントで上の文字を消されてしまった魔法陣はもう何の効力も発揮しない。
さて、これからがキツいオシオキの時間だ。
オレは槍を振るい、巨竜の群れに突風を巻き起こしてダメージを与えた。
「マイル、お前も何かやってくれるかー」
「そうねぇ。それじゃああーしも何かやって巨竜を怒らせればいいのね。シードバルカン! それにぃ、ログパイルバンカー!」
マイルの操った植物は、種の嵐や丸太杭の槍として屋敷の中から肉食巨竜の群れを襲った。
その後その攻撃に怒った肉食巨竜が群れを成して屋敷に踏み込んできた。
自然の驚異というのも馬鹿に出来ないもんだ。
怒れる肉食巨竜の群れはあっという間に白亜の屋敷を瓦礫の山に変えてしまった。
その中で見えたのは何か光る細長い光の塊だった。
どうやらアレはサークル伯爵が自らの身を守るための防護魔法を使ったのだろう。
だが、その光の塊はあっという間に粉々に砕かれた。
巨竜が強靭な牙で防護魔法の光ごとサークル伯爵を噛み砕いたのだ。
それが魔法自慢の貴族、サークル伯爵の最後だった。
「さて。一刻も早くこの島を離れた方がいいな。リョウクウ、後は頼むぜー」
「承知致しました! カイリ様」
リョウクウはパレス大将軍の奥さんを乗せ、船に向かった。
さて、オレはあの子供達を早く連れて来ないといけないな。
オレは海岸に向かい、海に向かって声を上げた。
「ハーマン、戻ってこーい! ここを離れるぞー!」
「ピイッピイッ!」
オレの声を聞いたハーマンはすぐに海岸に戻ってきた。
その背中には先程の子供二人も乗ったままだ。
多分この兄妹がパレス大将軍の息子と娘なのだろう。
この子達は本人の知らない間に親子ともども人質にされていたというわけだ。
「えー。もうおしまいなの? それじゃあ屋敷に戻ろうよー。今日はお客さんがいるからご馳走だと思うよ」
「残念だがあの屋敷にはもう戻らねーよ。でもお前達、ハーマンと一緒にいたいと思わないか?」
「うん! ぼくたちこの子と一緒にいたい!」
「それじゃあしばらく船旅になるぜー。大丈夫だ。お母さんも一緒だからなー」
オレは二人の子供を連れ、アトランティス号に戻ると巨竜の住む島の海域を離れた。
こんな場所にはもう用はない。
早くこのパレス大将軍の奥さんと子供達を安全な場所に送り届けなくては!
オレはその後リバテアを目指し、高速で船を走らせた。
そしてリバテアに到着したオレ達はこういう事情に一番詳しいのはゴーティ伯爵だと考え、リバテアの宿からユカの使っていたワープ床ってのを使ってこの城までたどり着いたってわけだ。
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「とまあここまでがオレの話だ。やはりパレス大将軍は家族を人質に取られて公爵派に従うしかなかったというわけだなー」
「これで納得です。私もあの高潔な彼が自ら弱者を踏みにじるような事をするとはとても思えませんでしたから」
「ゴーティ様、わたくしどものせいでパレス様は一体どれくらい苦しんだのでしょうか……本当に申し訳御座いません」
「いいえ、ゴテン様。貴女方が悪いわけではありません。悪いのは貴女方を騙して人質にした公爵派貴族です!」
カイリの話でパレス大将軍の事情はよく分かった。
さてボク達はここからどうするか作戦を考えないと。




