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725 魔法陣の中の屋敷

◆◆◆


「うへぇ。ここにも骸骨かよー」


 オレは屋敷の周りを囲んでいる魔法陣の足元を見た。

 そこには海底で見たものと同じような血で描かれた魔法陣が存在している。


 海底と違うところといえば屋敷の周りを囲むように魔法陣が描かれていて、その大きさがかなり大きいくらいか。

 多分術者は同じヤツなのだろう。

 血文字の形が海底で見たものと同じだった。


 だが見た感じ、魔法陣の効果は別物なのだろう。

 あの海底の魔法陣がモンスターを呼び出すものだとしたら、この魔法陣は中にモンスターを入れないためのものと言えるだろう。


 あの大量の暗殺者、そしてこの島にある場違いに巨大な屋敷。

 ここには間違いなく何かがある。


 オレは屋敷の警備をしていた兵士達をなぎ払いながら屋敷の中に踏み込んだ。


「オラー! ケガしたくない奴はさっさとどきなーっ!」


 オレ、マイル、リョウカイ、そして武士団は襲い掛かってきた兵士達を全員あっという間に返り討ちにした。

 だがここから先は慎重に行かないと、この島に居るのが重要な人質だとしたらあまり激しく動くとその人物の命が危険だ。


「ここから先は慎重に行くぜー。みんな、屋敷の中を手分けして何があるか探してくれ」


 オレは屋敷の中でも広い部屋の扉を蹴破った。


「おやおや、下賤な輩が入り込んできたみたいですね。ここがどこだと思っているのですか?」

「ああー!? 知らねーよ。テメー誰なんだよー?」

「ホッホッホ、ワタクシ、貴様らに名乗るような名前はございませんよ」


 髭のカールした、いかにも貴族といったいけすけない男が現れた。


「この島に足を踏み入れたからには死んでもらいましょう。ワタクシの手にかかって死ねることを光栄に思いなさい」


 そう言うと貴族の男は自らの身体に何かの魔法を使った。


「これは一切の鉄どころかミスリルの武器すら通さない魔法障壁、お前達はワタクシに一切の手出しも出来ず魔法でなぶり殺しにされるのですよっ」


 そう言って貴族の男はオレに向かって魔法を放ってきた。

 しかしハッキリ言ってショボい。

 こんなのサラマンダーの火炎玉よりも弱いくらいだ。


「な、やりますね。ワタクシの魔法を受けて無事なんて、信じられませんよ。それではこれで黒焦げになりなさーい!」


 そう言って貴族の男は、今度は雷の魔法を放ってきた。

 この程度、痺れるどころか痒さも感じない程度だ。


「ひっ、なぜワタクシの魔法を受けて無事なんですか! 今度こそ、石つぶてなら魔法効果では無くてもダメージを受けるでしょう!」


 次に放ってきたのはこぶし大の大きさの石が何個か飛んでくる魔法だ。

 あまりのショボさにオレは槍を一振りで全部を粉々にした。


「ひいいいいー。し、信じられん! お前は一体何者だ!」

「おや、テメー自らは名乗る気も無いのにオレには名前を教えろって、虫が良すぎねーか?」

「黙れ黙れ、下賤の者が。ワタクシは貴族なのよ、伯爵様なのよ!」


 あーそうですか。やたらと貴族を前面に出すことからコイツらが何者かはもう想像がついた。コイツは公爵派とユカ達の呼んでいた貴族ってわけだ。


 その時、屋敷の大広間の上の窓をぶち破ってリョウクウが姿を現した。


「リョウクウか、どうだった!」

「カイリ様、どうやらこの島は巨竜が住まう島のようです。人がいるのはこの魔法陣の結界内だけのようです」

「おう、リョウクウ。ありがとうよ」

「カイリ様、そこの者は一体誰なのですか?」


 貴族の男はいきなりの上空からの参入者にビックリして腰を抜かしたようだ。


「カカカッ……カイリだと!? お前はあの大海賊カイリなのか!?」

「おうよ、オレが大海賊カイリ様だぜー。アンタ、オレを知ってるのかい」

「キサマが奴隷貿易を邪魔していたカイリか! キサマには公爵様が相当お怒りだ! キサマの首を公爵様に差し出してワタクシはここから栄転させてもらいますよ!」


 そう言って貴族の男は魔法の詠唱を始めた。

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