721 パレス大将軍について
「とても信じられないお話ですね! まさかあの星の海の中にそのようなものがあったとは……」
「星の海?」
「はい、私達のような空を遠眼鏡で見る好事家には、あれらの星の群れのことを星の海という風習があります。他にも銀河、星雲、星海、様々な呼び方もありますが、私は星の海と呼んでおります。しかしその中に古代文明の遺産が在ったとは……」
ボクはゴーティ伯爵にバロールの欠片を手渡した。
「な、何ですかこれは!? まさか、コレは伝説のオリハルコンッ!?」
普段冷静なゴーティ伯爵ですらビックリするくらいだ、オリハルコンがどれ程貴重なものなのかがとてもよく伝わってくる。
「はい、それが古代の魔神バロールの身体の一部だったオリハルコンです。ボク達はその魔神と戦い、勝利しました」
「まさか、あの数日前に地上に神の光が落ちたと大騒ぎになった光はその魔神のものだったのですか?」
ここで本当のことを言うべきかどうするべきか、しかしここで時間を使うよりも今後ターナさんを助け出してアルビオンを今度こそ倒す方が重要だ。
「はい、ボク達と魔神の戦いの際に魔神の放った光が地上まで届いたのかもしれません」
「そうでしたか、私は下手すればこの世界には神にも匹敵する力の持ち主がいてその者が神の光を落としたのかと考えておりました」
やはりゴーティ伯爵の洞察力は半端じゃない!
下手にこの話を続けるとドツボになりそうなので早く切り上げよう。
「あの、それで伯爵様、ボク達は空帝戦艦アルビオンから避難民を大量に乗せてきています。その方達をどうか助けてあげてもらえますでしょうか」
「勿論です、すぐにでも連れてきてください。広場は大きく開けるように部下に指示しておきますから」
「ありがとうございますっ!」
ボク達はゴーティ伯爵にお礼をし、その場をすぐに離れて飛行艇グランナスカに戻った。
グランナスカに到着した時、アンさんが少し寂しそうな顔をしていたのは何故だろうか?
まあいい、今はゴーティ伯爵が歓迎してくれると言っているので早く城に向かおう。
ボクは操縦席に座り、グランナスカを伯爵の城目指して飛ばした。
ボクがグランナスカを飛ばし、城に着いたのはほんの少しの時間だった。
「まさか、これが古代の飛行艇!? 確かに黄金のコンドルに見えますね……」
ゴーティ伯爵は飛行艇グランナスカの巨体を見て、少年のように目を輝かせていた。
そりゃあそうだろう、こんなものを見てワクワクしない人はそうはいないはずだ。
現に今や着陸した飛行艇グランナスカの周りには一目姿を見ようと黒山の人だかりが出来ているくらいだ。
そんな中、ボク達は操縦席のある頭部入り口から地面に降りた。
「ユカ様! これは凄いですね。確かにこれならあのアルビオンに勝てるかもしれませんね」
「伯爵様、油断はできません。相手にはこの国最強の男、パレス大将軍がいるんです。決して油断して勝てる相手ではありません」
「パレス……そうですね、彼の強さは私もよく存じております。しかしユカ様はあのパレス大将軍と戦ったのですか?」
「はい、一騎打ちの途中魔将軍アビスの邪魔が入りましたが、ほぼ同じくらいの強さでした……」
「まさか、あのパレス大将軍と一騎打ちとは、流石はユカ様というべきでしょうか」
どうやらゴーティ伯爵はパレス大将軍がどのような人物かをよく知っているようだ。
「伯爵様、伯爵様ならパレス大将軍というのがどのような人物かはご存じなのでしょうか。何故彼はあの非道なテリトリー公爵の公爵派貴族に加担しているのですか?」
「それは、私にも存じかねます。彼は決して非道な行いを喜んで行う人物ではなく、むしろ弱者の剣になるような人物でした……そのような彼が何故……」
その疑問を解消してくれたのは意外な人物だった!
「ようユカー、元気かー? その秘密、オレ達が教えてやるぜー!」
この声は、カイリ!
彼は何かパレス大将軍に関する重要な話を知っているようだ。




