714 戦艦内部の攻城兵器
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飛行艇グランナスカで空帝戦艦アルビオンの側面に突入したボク達は、中に捕らえられている人達を助け出すために船の中を詮索することにした。
船の中は急いで移動しようとする連中でごった返している。
ボク達はその連中の流れに逆らい突き進んだ。
目指すは船の下の部分だ。
船の上部は貴族達のパーティーに使われているが、下の部分は奴隷売買用に詰め込まれた人や、先程のような見せしめの処刑用に用意された人達が監禁されている。
ボク達はそれらの人達を助けるために船内を走り回った。
「侵入者だ! 殺せっ!」
兵士が叫んでボク達に襲いかかってきたが、彼等のレベルは言っても20後半と言ったところだろう。
普通の一般人相手にするならまず勝ち目のない精鋭だと言えるだろうが、この程度の連中は数万の魔族の大軍や古代の破壊神と戦ったボク達の敵ではない。
「この程度の敵なら武器を使わなくても倒せる!」
ボク達は周りの一般人に被害者を出さないために素手で兵士を叩き伏せた。
傍から見て強固な鎧や武装を身に着けている兵士が素手で鎧を壊されて殴り倒されるのは奇妙な光景に見えるだろう。
だが下手にここでボク達が武器を使えばオリハルコンで出来た装甲の船だとしても風穴が空いてしまい一般人に犠牲者が出てしまう。
そのためボク達は手加減をした形で敵を倒しているのだ。そしてボク達は彼等が閉じ込められた檻を見つけることが出来た。
「ダレかしらないけど、ここはあけられないよ」
どうやら檻は頑強な金属で出来ているらしく、中の人達は全員が外に出ることを諦めていた。
「皆さん、下がってください!」
ボクは檻の中の人に後ろに下がるように言った。
そして鞘から新生エクスキサーチを引き抜き、一瞬で檻を叩き切った。
オリハルコンで出来た剣に斬れない物は無い、いくら頑強な金属で作られた檻だとしてもこの剣の前には薄紙も同然だ。
「そんな……しんじられない……」
「皆さん、ここから脱出してください!」
ボクが叫ぶと捕らわれていた人達は全員が走り出し、ボクの降りてきた方向に向かった。
そこにはアルビオン側面に突入した飛行艇グランナスカがあるからだ。
ホームさんやルームさん達が人質だった人達を誘導し、アンさんや大魔女エントラ様は極力攻撃魔法を使わずに兵士を倒していた。
エリアさんはアンデッド化した貴族に対して絶大な力を発揮し、浄化した。
攻撃力は皆無な彼女だが、浄化や癒しの力は誰よりも勝る、流石は創世神の半身というべきか。
そしてエリアさんの浄化の光は人質だった人達の疲労や精神も回復させている。
グランナスカに到着した人達は檻に閉じ込められていた時よりよほど生気にあふれた顔になっていた。
「みんな、人質を全員助けたら脱出するぞ!」
ボク達は大体の人質を助け出し、ここから脱出しようとしていた。
その時……ボク達はいるわけの無い人をこの場で見ることになってしまった。
人質を助け出し、船から脱出しようとしたボク達の前に突如巨大な物体が姿を現した。
「な、何だアレは!?」
そこにあったのは、この戦艦の中にどうやって積んでいたのか? というくらい巨大な攻城兵器を組み合わせた怪物だった。
その上部には誰かがいるらしい。
「キャハハハハハッ! 毎度毎度よくもまあアタシちゃんの楽しみを邪魔してくれるわね!」
「その声は……アビスか!?」
「そうよ、アタシちゃんよ。ユカ、いつもいつも邪魔ばかりして、今度こそバラバラのグチャグチャにしてあげるわっ‼」
巨大攻城兵器の上部に居たのは魔将軍のアビスだった。
という事は、これはアビスの作った機械なのか。
ボクは新生エクスキサーチを構え、巨大攻城兵器の上に飛び乗った。
いくら大きいと言ってもあのバロールに比べればこんなヤツ敵ではない!
そう思ったボクだったが、そこには想定外の人物がいた。




