710 救出作戦開始!
飛行艇グランナスカは人工島エルドラドから一気に遠い距離を移動してきた。
その直後とあって今は飛ぶ速さに制限がかかっているようだ。
この速さでは空帝戦艦アルビオンに追いつくことは出来ても、そこから突き落とされて処刑される人達を助けることが出来ない。
それならばと、飛行魔法の使える三人、大魔女エントラ様、アンさん、それにルームさんがグランナスカから飛び出したわけだ。
あの三人は飛行魔法を使いこなせる。
確かにグランナスカで追いつこうとするよりはその方が速いだろう。
三人ともバロールとの戦いで体力と魔力を使い果たしたので今はまだ回復途中といったところだが、それでも通常レベルの魔法使いを大きく上回るだけの力は残っている。
早くあのアルビオンでの蛮行を止めないと、犠牲者がどんどん出てしまう!
ボク達がそう思っていた時、早速次の犠牲者が出てしまった。
甲板から突き落とされた男は……風にあおられて真下に落下し、なんと飛行戦艦のプロペラに切り刻まれ一瞬で血煙となってしまったのだ。
アレはどうやっても助からない……。
彼が何者だったのかはわからない。
だがこれ以上の犠牲を出させるわけにはいかない。
そのためにも三人に頑張ってもらわないと。
ボクは操縦桿を預かったままアルビオンめざし船を進めた。
船が近づき、ハッキリと目視できるようになった時、船の上からみすぼらしい親子連れが突き落とされようとしていた。
アレはどう見ても犯罪者には見えない。
間違いなく貴族による見せしめか、言いがかりだろう。
あの親子は絶対助けないと!
三人が空を飛んでいる間にアルビオンから母親と子供が突き落とされた。
母親は最初どうにか子供を抱えていたようだが、力尽きてしまい手を放してしまったようだ。
その後、父親らしき人物も落とされてしまった。
幸い今回は飛行船のプロペラで斬られることは無かったが、このままでは命が危ない!
三人が飛行魔法で近づいているが、それでもまだ間に合わない距離だ。
その時、船の上から誰かが飛び降りた。
どうやら男性のようだが、彼はボク達の見ている前で先程の親子を助けようとしていた。
彼の使った風魔法が落下しようとしている親子を捉えたのだ。
あの魔力を見る限り、かなりの魔法の使い手だと言える。
彼のおかげで親子連れは大きな怪我も無くその場に身体を保てているようだ。
だが、あんな魔力を放出し続けていては……普通の人間ならすぐに持たなくなる。
案の定、魔力は長持ちせず、魔法を使っていた男と親子連れは風が消えた途端再び地面目掛けて落下を始めた。
頼む……間に合ってくれ!
「ふう、危機一髪ってとこだねェ」
「こちらも問題は無いぞい。童どもも少し弱っておる程度じゃ」
「お師匠様、こちらの男性も無事ですわ」
大魔女エントラ様、アンさん、ルームさんの三人は飛行魔法で転落する親子連れを全員助けることができたようだ。
良かった、本当に良かった……。
だけど安心はしていられない、ボク達が次にするべきことは……空帝戦艦アルビオンを止めることだ。
だが先程の様子を見る限り、船の中には何の罪も無い人質になりそうな人が大勢捕らわれているかもしれない。
そうなると空中で爆破させたりするのは難しいだろう。
今あの中に捕まっている貴族や兵士以外の人を助け出さないと全員まきこんでしまうことになる。
ボクはグランナスカの操縦桿を握り、空帝戦艦アルビオン目指して飛んだ。
あの中に入って人質になっている人達を助けるためだ。
「みんな、突入準備は良いね!」
「大丈夫です!」
「俺も準備できています」
「我も大丈夫だ、いつでも行ける」
ボク達はこの飛行艇グランナスカを直接アルビオンに突っ込ませることで一気に人質を助けることにした。
さあ、救出作戦開始だ!




