69 飛び出すな、魔獣は急に止まれない
この話書き始めて1か月が経ちました。
読んでくれてありがとうございます
「よし! 盗賊退治開始だ!」
みんなのテンションは最高潮だった。そして商隊と私達はフロアさんの上空から確認した場所とホームの持ってきた地図を元に盗賊の出現地域を特定した。
「この街道沿いの横に関所に続く山がある。この山はヘクタール領との境目で険しい為に関所を通らないと行き来が出来ない場所だね」
「ユカさん、やつらは魔獣を使っているに違いありません」
「フロアさん? それはどういう事ですか?」
獣使いの一族ならではの見解でフロアさんは私達に説明をした。
「この山は本来獣の住む山、人の出入りは難しい。しかし、その獣を操る魔獣使いがいれば獣の背中や体にしがみついて移動ができるわけです」
私はそれを聞いて『鹿が降りられるなら馬も降りられる』の『鵯越の逆落とし』という故事が日本にあったのを思い出した。
「なるほど、ではあえて奴らのカモに見えるように山を横にして移動しよう」
「そこを私の魔法でギタギタにするのでございますね! 承知いたしましたわ!」
「ルーム! それでは撃ち損じたら生き残りが逃げてもう作戦が二度と通用しなくなるよ!」
ホームの言うのも、もっともである。一度きりのオトリ作戦、“ラスティング・サーガ2”で河合プロデューサーが描いたシナリオでこういうのがあったな、あれは空挺戦艦を破壊する為の砲台戦艦の偽物を作るシナリオだった。
砲台戦艦は張りぼてで数発の空砲で空挺戦艦を基地に釘付けにするためのオトリ、一度破壊されると難易度の高い奴隷ルートの内部破壊シナリオしかクリアできない一発勝負!
今回の盗賊退治も撃ち損じ無しの一発勝負である。ここは問題児魔導士の使い方をよく考えないと作戦がパーである。
「頼んだよ! ルームはいざという時の切り札なんだ。みんなが頑張ってくれた後、最後のトドメをお願いするよ」
「流石はユカ様ですわ! 私の重要性によーくお気づきで嬉しいですわ」
こういうタイプはおだてておいて後で本当に少し活躍する場を用意するのが最良である。
「さーて、あーし達はぁ、か弱い商人の商隊になっておけばいいのねぇ」
「マイル様、荷物箱の中に数名武器を持った者を用意致しました!」
商隊の武器に自信のある数名が入ったのは盗賊団に身ぐるみを置いて行けと言われた時点で差し出すふりの箱である。
箱の下には小さな車輪がついていて中には穴が開いているので荷物のふりをしつつ動く事が可能である。
これでオトリ作戦は準備完了! 後は盗賊団が現れる場所まで移動するだけだ。
◆
「へへへっ、まーた商隊が来たぜ」
「男は皆殺し、女は奴隷として男爵様に差し出せばまた一儲けできるぜ!」
「そして奪ったブツは男爵領で困った貧乏人に高値で売りつける、美味しい商売だぜ!!」
盗賊団達は魔獣使いの操るブラッドウルフやキラーベアにしがみついた形で山を猛スピードで降りてきた!
「おらぁー! 荷物置いていけやぁ!! 命乞いしても男は殺すけどな!」
「ヒャッハーーー!! お宝だぜェー!!」
私は盗賊の態度が予想通り過ぎてもう笑うに笑えなかった。
お前らどこの世紀末から来たんだ!? もうモヒカン頭でタトゥー入れてトゲ付き肩パットつけてろよ!
「目の前の地面を辺り一面のバンジーステークにチェンジ!!」
「!!!???」
「グェーッ!」
「ウボァー!!」
慣性の法則とは恐ろしい物である。猛スピードで突っ込んできた盗賊団の乗っていた魔獣は全て辺り一面のバンジーステークの上で串刺しになり一瞬で絶命した。
そして振り落とされた盗賊はバイク事故の転倒くらいの勢いで木や岩に全身を強く打ち付けられミンチになったもの数名、大根おろしでおろしたくらいに腕や足を大怪我したもの数名、それでも無事だった者の『死亡者多数、重体数名、重軽傷者35名以上』が残った。
「イテェエ! いてえよー!!」
「何だよォ!? こんな奴いるなんて聞いてねェぞ!!」
だが同情はしない! コイツらは今まで多くの人を苦しめてきたヘクタール男爵の手下共だ。
さあ。ここからは殲滅戦の時間だ!