683 軋む破械神
右腕を失ったとはいえ、バロールは古代の破壊神と呼ばれた超巨大なゴーレムだ。
その攻撃方法は多彩で、眼からの破壊光線、衝撃波、左腕のカギ爪はまだ残っている。
さらにビットと呼ばれる使い魔が飛び回って体の中心から光線も撃ってくるのでこれも厄介だ。
ボクはバロールの正面に立ち、ビットを集めさせて攻撃させた。
するとボクを狙い撃つようにビットが何匹も群れになって襲い掛かってくる。
「ボクの足元の高さをチェンジ!」
ボクはビットが攻撃する瞬間、足元の床の高さを低くし、攻撃をかわした。
そしてそのタイミングでビットを切り裂こうとした。
だが、ボクの攻撃は宙を切ることになる。
ビットは思った以上に動きが早く、ボクが自らをオトリにして集めたはずのビットは攻撃を受ける前にサッと分散してしまった。
その上でビット達は隙の出来たボクを狙い撃ってきた。
「うわぁっ!」
ビットの光線が直撃する!
ボクは数匹のビットの集中攻撃を体に受けてしまった。
「あれ? 痛くない……」
助かった。
どうやらボクはアルカディアで手に入れたオリハルコンの鎧を着ていたので、ダメージを受けずに済んだようだ。
「今度はこちらの番だぁ!」
ボクは新生エクスキサーチを構え、バロールの胴体目掛けて斬りかかった。
ホームさんの最強必殺技で全身を切り刻まれたバロールの胴体は破損個所が多く、オリハルコンの装甲もあちこちが剥がれている。
この状態なら攻撃も通じるだろう。
ボクは剣を振るい、バロールの装甲を弾き飛ばした。
バロールの胸部装甲の内側は、蜂の巣のような構造の膜で覆われている。
どうやらバロールの装甲はこの蜂の巣のような構造の上に組み込まれていたようだ。
『まさかこの世界でハニカム構造を見るとは……』
『ソウイチロウさん、わけのわからない単語で感心するのはやめてくださいっ』
今は彼の相手をしている場合ではない。
そのハニカムコウゾウってのが何かわからないが、今の戦いには必要のない情報だと思ったからだ。
『すまなかったな、だがユカ、ハニカム構造が何かを知れば攻撃はしやすくなると思うぞ』
『だったら手短に話してください!』
『わかった。ハニカム構造ってのは軽くて丈夫さを保つために金属等を蜂の巣のような穴だらけの縦に強い形に組むことだ。これは衝撃に強いが、突撃には弱い、それに軽さを保つために接合部分が脆くなるんだ』
なるほど、確かにそれは知っておいた方がいい情報かもしれない。
つまりはあのバロールの内側の構造は突きの攻撃には弱いということなのか。
「みんな、バロールの装甲の内側を狙うなら斬るよりも突く攻撃の方が効果的だ!」
「なるほど、わかった。サラサならそういうのが得意だ」
「ユカ、わかった。我、弓使う」
サラサさんはバロールの装甲の剥げた部分目掛け、オリハルコンの弓を構えた。
そして装甲の内側のハチの巣状の部分を狙い、鋭く何本もの矢を放った。
サラサさんの矢はバロールの装甲の内側に入り込み、機械にえぐり込んだ矢は機械をきしませる。
「後は妾に任せると良いねェ。トールハンマァー!」
大魔女エントラ様の放った雷はバロールに刺さった矢目掛けて何本もの稲妻となって叩き込まれた。
オリハコンの弓で放ったとはいえ、矢は普通の金属だ。
この金属は普通に雷の攻撃を通すものだったので、バロールは中から雷の大打撃を受けた。
全身の機械から煙を上げるバロールは満身創痍と言える。
だがそれでも動き続ける事ができるのは流石古代最強最悪の兵器だと言っていいだろう。
バロールはその巨大な眼をボク達に向けながら身体を空中に浮き上がらせた。
どうやらアイツに足が無いのはスカート部分の内側にある巨大な球体で空中に浮いているかららしい。
空中に浮きあがったバロールは下にいるボク達に向けて撃つために、破壊光線の光を溜め始めた。




