681 折れた剣とオーラの刃
ボク達とバロールの本格的な激戦が始まった!
バロールはあの巨体に関わらず素早い動きでボク達の攻撃を弾いている。
あのカギ爪には何かの魔法効果が施されているようだ。
「こいつ、思ったよりも固いっ」
ホームさんが持っているのはアルカディアで受け取った武器の中でも最強のオリハルコン製の剣だ。
通常のモンスターならこの剣で斬れない敵がいるわけがない。
だがそれが同じオリハルコン製だとするならば話は別だ。
同じ金属の武器を持っているならば、攻撃する側の力が強い方が有利に決まっている。
そう考えるとホームさんの身体の大きさとバロールのサイズは30倍以上だ。
あの巨体で打ち込めば対格差だけならホームさんに勝ち目はない。
「苦戦しているようだねェ。ストレングスッ」
「ありがとうございます、エントラ様」
大魔女エントラ様がバフの魔法をホームさんにかけてくれたようだ。
これで力の差が少しは縮まったのかもしれない。
だがそれでもあのバロールのカギ爪はオリハルコンの剣でもビクともしない。
バロールの力はそれほど強大だというのだろう。
「では次はワシが相手じゃ、紫電よここにあれっ!」
アンさんが集めた雲は紫の雷を放ち、バロールの身体を貫いた。
どうやらオリハルコンの装甲が剝げた場所からは雷が通じるらしい。
この雷の攻撃には効果があるようで、バロールの動きが一瞬止まった。
「今だっ 喰らえ、縦一閃!」
ホームさんの剣技がバロールの爪の一本に深く食い込んだ。
そのタイミングを狙い、ルームさんが後ろから魔法を放つ。
「行きますわよ、エアリアルバースト!」
どうやらルームさんの魔法は攻撃が目的ではなく、ホームさんの身体を突風で巻き込むことが目的だったようだ。
これは息の合った兄妹だからこそできる二人だけの連携技だと言えるだろう。
ルームさんの突風魔法を体に受けたホームさんはオリハルコンの剣を構えたまま突風の速さを利用してバロールに素早く斬りかかった。
「うぉおおおおおおっ」
凄まじい猛攻だ。
オリハルコンの剣は何度も何度も素早くバロールのカギ爪を弾き続けている。
強固に作られたはずのバロールの爪はヒビだらけになってあちこちが砕けていた。
「これでとどめだぁ!」
ホームさんが鋭く剣を振るってバロールの腕を斬り飛ばそうとした時、凄まじい音が響いた。
パキィイイインンッ!
「何だって!?」
なんと、あまりの攻撃の激しさに、オリハルコンで出来た剣は折れてしまった。
折れた剣はそのままバロールの腕に刺さったままになっている。
「くっ、まさか剣が折れてしまうなんて……」
世界最強の物質であるオリハルコン。
そのオリハルコンで出来た剣が折れるとは、一体ホームさんの強さはどれほどのものなのだろうか。
だがそんなことを言ってる場合ではない。
剣が無ければ騎士のホームさんにバロールと戦う手段は無い。
いくらホームさんが強いと言っても、全身をオリハルコンで作られたアイツが素手で倒せるわけがないからだ。
「ホームさん、下がってください。後はボクがやります!」
「ユカ様、大丈夫です。僕にはまだ武器がありますから……」
武器があると言っても、ホームさんの持っているのは折れたオリハルコンの剣だけだ。
「お兄様、無理しないで下さい」
「大丈夫、僕はまだ負けていないから、そこで見ていてくれ」
そう言うとホームさんは折れたオリハルコンの剣を握り、強く気合を入れた。
「うぉおおおおおおおおおっっ!」
すると彼の全身から青白いオーラが迸った。
「僕の編み出した最強の剣技、見せてやる!」
なんと、ホームさんの持った折れた剣の先に青白い光の剣が作られている。
それは彼のオーラが剣の刃になった物だった。
「行くぞ、僕の最強の絶技、これが僕の最高の技だぁあああっ!」
そう言ってホームさんはバロール目掛け、瓦礫を踏み台に高く跳び上がった。




