678 超降下滑空攻撃!
グランナスカの巨体は、大きく上空に舞い上がり、その後反転してバロール目掛けて急降下した。
その速さは獲物を狙う海鳥や山鳥よりも速く、中にいるボク達は相当の衝撃を受けている。
この前方から迫ってくる見えない衝撃圧は飛行艇ヴァルジオンでも受けたが、今の圧力はそれをはるかに上回る力だ。
この速さと巨体に加え、グランナスカには全身に蓄えた光る力が蓄積されている。
この全てを一気にあのバロールの巨体にぶつけるんだ。
もしこの一撃をバロールが避けてしまえば、この渾身の力は空振りで無駄になってしまう。
だが、なまじ強いだけにバロールには避けるという思考は無いようだ。
ヤツは上空のグランナスカ目掛け、巨大な眼から放つ破壊光線を蓄えている。
つまり相手には動こうという意思が無い。
これはボク達にとって最大のチャンスだ。
ボク達は大魔女エントラ様の防護魔法で結界を張ってもらいながらグランナスカの巨体でバロールに体当たりを決めようとしている。
ボク達が急滑降するタイミングと同時にバロールは目から破壊光線を放ってきた。
今あれを避けるとせっかくのこの力を蓄えた体当たりが無駄になってしまう。
ここはあの破壊光線を避けずそのまま突っ込んだ方がまだ勝ち目が見える!
『ユカ、私にいい考えがある。少し任せてもらうぞ』
ソウイチロウさんはボクの手で水晶の板を操作し、手早く何かの作業をした。
その時にソウイチロウさんが何をしたのかは、その場にいるみんなが分かっていなかったが、ボク達はそのおかげで無事その場を切り抜けることが出来た。
彼がやったことは、グランナスカに集めた力を一気に前方に集めることだった。
光っていた翼はそのままだったが、その光の層は見れば前方の方がとても分厚く、前方はほぼ光で見えなくなっている。
「このままバロールに体当たりだぁあああっっ!」
グランナスカは眼前に迫ったバロールにくちばしから突っ込み、その巨体に身体をめり込ませたまま地面すれすれを飛んでバロールを地面にたたきつけたまま地面を引きずった。
ググォオオオオオオオアアァアァッッ‼
バロールの身体から叫びとも鳴き声とも言えない巨大な音が轟く。
ボク達はバロールに体当たりをした衝撃で全員が操縦席の中で吹っ飛ばされた。
バロールとグランナスカの二体の巨体が動きを止めたのはバロールをしばらく地面に叩きつけて引きずった後だった。
どうやらグランナスカは船にあった力を全部使い切り、もう動けなくなってしまったようだ。
「いててて……みんな無事か?」
「こっちは大丈夫です」
「私も大丈夫ですわ」
「安心するがよい、誰一人怪我人はおらんわい」
どうやら全員のダメージはエリアさんが魔法を使ってくれたので回復出来ているようだ。
「みんな、外に出るぞっ! 今こそバロールを倒すんだっ」
「了解ですっ」
「さあ、腕が鳴るねェ」
「俺達は皆さんの援護に回ります」
ボク達はグランナスカの上に開く扉を開け、船の外に出た。
なんとアレだけの衝撃だったにもかかわらず、グランナスカには傷一つ無かった。
それに対してバロールは全身あちこちに装甲の剥がれや関節部分の露出等が見える。
今のバロールならボク達でも倒せる!
これからは総力戦だ。
ボク達は、動けずにグランナスカの頭部がめり込んだ状態になっているバロール目掛け、攻撃を仕掛けた。
「さあ、喰らいねェ! アトミックレイッ!」
大魔女エントラ様の魔法がバロールの身体に当たった。
オリハルコンで包まれたはずの巨体には本来なら魔法は通じないはずだ。
それはボク達が黄金巨神ダルダロスとの戦いで痛感している。
だが、オリハルコンの装甲が剥がれた内部なら魔法は効果があるようだ。
バロールは苦しんでいるように見えた。
いくぞっ、ボク達の全力でアイツを倒してやる!
ボクは新生エクスキサーチを構え、バロールに向き合った。




