674 心臓部を繋げ
グランナスカは一瞬だけ目を光らせ、その輝きを見せた。
だが、そのすぐ後にグランナスカは再び沈黙してしまった。
「グランナスカ、動けッ! 何故動かんッ!?」
ボクの身体を使ってソウイチロウさんはどうにかこのグランナスカを動かそうと何かをしている。
足のペダルを踏んだり、水晶の板を何かいじったり、ボクには分からないが彼なりに理解した上での行動なのだろう。
しかしグランナスカは動かなかった。
「くそっ、どうなっているんだ。むしろ全く動かなかったのではなく、一瞬だけ動いたって事が気になるな」
どうやらソウイチロウさんはグランナスカが全く動かなかったわけではないことに注目したようだ。
ボクには分からないが彼には何か心当たりがあるのかもしれない。
『ソウイチロウさん、全く動かない、と少し動いたの違いって何ですか?』
『ユカ、コレは待機電力とか残存エネルギーというべき物だろう。つまりはこのグランナスカは元々空を飛べていたわけで、その時にほんの少しだけ残っていたエネルギーが今私が手をかけたことで一瞬だけ動いたという事だ』
なるほど、ほんの僅かだけ残っていた力で目を光らせたってわけか
『だがグランナスカの飛ばない理由は想像がついた、コレはバイパスの不備だ』
『バイパスの不備? 一体どういうことですか』
『簡単に言えば、心臓から体への血管が切れてしまっているので、動かないというところか』
なるほど、その説明なら僕でも理解できる。
ボクはソウイチロウさんに任せ、グランナスカの腹部に移動した。
「どうやらここが動力部、メインのエンジン部分みたいだな」
「複雑な機械が色々とあるみたいだねェ」
グランナスカの胴体、腹部の下の部分は複雑な機械と管や筒があちこちに張り巡らされていた。
ソウイチロウさんが言うにはこの機械と管を繋ぐどこかが切れてしまっているのでグランナスカは動けないそうだ。
「メイン動力炉は……これだなっ!」
どうやらソウイチロウさんはこの複雑な機械の中から心臓部分に当てはまる場所を見つけ出したらしい。
「……ダメだ、これじゃあ飛ぶどころか動く事すらできない……」
ソウイチロウさんは機械を見ただけで原因を見つけることが出来たようだ。
だが、それは動けないことをまざまざと認識する結果になってしまった。
『ソウイチロウさん、なぜ動けないとわかるんですか?』
『ユカ、このグランナスカはメインのバイパス部分が焼き切れてしまっている。つまりは大動脈に当てはまる部分が焼き切れているのでそこから動力を通そうとしてもつなげることが出来ないんだ。その辺りにある飛行艇のパーツが使えればいいんだが、どうもこのサイズに当てはまるようなパーツが残っているとは言えない』
『何か手は無いんですか!?』
ボクはソウイチロウさんに何かできる手段が無いか聞いてみた。
『難しいな、この時代の機械で無事な物、それを何か代用させて使えればバイパスの代用になるかもしれないが……』
『この時代の機械……ですか?』
ボクは思い出してみた。
そういえばターナさんが何か作ってみた機械があったはずだ。
『ソウイチロウさん、この時代の機械なら使えるんですか!?』
『この時代とは限らなくても、この技術と同等の物ならどうにかつなぐことが出来るかもしれないが……』
それならターナさんの機械と、あの壊れた首の無い機械の馬があったはずだ!
『エントラ様に首の無い機械の馬を出してもらってくれますか!』
『ああ、あのエアバイクか。それなら使えそうだなっ』
「エントラ様、以前しまった首の無い機械の馬を出してもらえませんか!」
「あれ? まあいいけど、あんなもの何に使うのかねェ」
大魔女エントラ様は異空間に収納していた首の無い機械馬を取り出してくれた。
「よし、これとこの動力システムを使えば、どうにかグランナスカを動かせるかもしれないぞっ」
ソウイチロウさんはそう言うと、機械の馬をバラバラにし、その部品を形の合いそうな場所に次々と組み込んでいった
そして夕暮れくらいの時間に、ようやくその作業は完了した




