673 植物達の呪縛
ボク達が到着した場所には船の残骸が転がっている。
かなり大型の船などもあり、形はアルビオンを小型化したような船そのものの形の物の他にもヴァルジオンのような鳥の形に似た小型の物もあった。
どうやら古代の人達はこの船を使って空を自由に飛んでいたらしい。
ソウイチロウさんの言っていた空を飛ぶ船が古代には実際に普通に使われていたのだろう。
だが船の残骸の大半は壊れていて元の形がわかるものは見つからない。
ひょっとしてグランナスカもこんな形で残骸だけが見つかったとしたらボク達はここから戻ることもバロールと戦うこともできなくなる。
そんな恐ろしい結果を一瞬でも考えてしまうと、この後やることが無駄になってしまう気がする。
だがそんなことも言ってられない。
ボク達がグランナスカを見つけないとバロールを倒すことは出来ないのだ。
ボク達は大魔女エントラ様の認識疎外の魔法結界の中で動きながらグランナスカを探した。
だがそれらしい船はこの地上には見つからなかった。
一体グランナスカはどこにあるのだろうか?
ボク達は周囲の探索場所を広げてみることにした。
管制塔の裏側には、森が広がっている。
どうやら中庭か何かだった木がそのまま建物を飲み込んでしまい、一種の樹海になってしまったようだ。
「ひょっとしたらこちらの方にあるかもしれない」
ボク達が管制塔の裏の森に行くと、森のあちこちには柱らしきものがあちこちに立ったまま朽ちていた。
『ユカ、どうやらこの一角は造船ドックの跡のようだな、あのザイダヴェックやアルビオンを置いていた場所と似たような感覚だ』
『ソウイチロウさん、それじゃあここにグランナスカはあるという事ですか!』
『多分な、もし飛べなくなっていた物を修理したとするなら、ここにあってもおかしくはない』
飛べなくなった物を直す。
なるほど、作ることが出来るという事は修理する事もできるというわけか。
それなら確かに飛べなくなったグランナスカがここにあってもおかしくはない。
ボク達は樹海の奥に踏み込んだ。
そこには少し広がった広間のようになった場所が広がっていた。
そこでボク達はついに……黄金のコンドル、グランナスカを見つけることが出来た、
「これがグランナスカ……」
「間違いない、これぞ我が一族に伝わる黄金のコンドル」
その姿はまさに巨大な黄金のコンドルと言うに相応しい巨体だった。
全身をオリハルコンの装甲で作られた金属の鳥、それは樹海の蔦や植物に絡みつかれ、地上に呪縛されているような姿だった。
とてもこの姿で空を飛べるとは思えない。
「この鬱陶しい植物、全部焼き払ってしまおうかねェ」
「えんとら、火事の火をばろーるに見つかりたいのか?」
「そうねェ、それだとやめておいた方がいいねェ」
ボク達はグランナスカにへばりついた蔦や蔓草、絡みついた木の枝等を武器で斬り払い、植物の鎖からその機体を引きはがすことに成功した。
「ユカさん、どうやらここから中に入れるようです」
「何だこれは!?」
グランナスカの中は空洞になっている場所と、機械が所狭しとびっしり詰まっている場所があちこちに見られた。
そして鳥の頭部に当てはまる場所に到着したボク達は、船の舵輪のようなものを見つけることが出来た。
『ユカ、私に少し身体を貸してくれ、この船が飛べるかどうかを調べてみたいんだ』
『ソウイチロウさん、わかりました。お願いします!』
ボクはソウイチロウさんに身体を譲った。
ボクに身体の主導権を借りたソウイチロウさんは水晶の板に指を乗せ、舵輪を握り、盛り上がった床を踏んだ。
ググググウォォオオオオンッッ!
なんと、ソウイチロウさんのおかげで、数千年以上沈黙したままだったグランナスカはその生命の息吹を再び取り戻したようだった。
だが、グランナスカのその目の輝きはその後一瞬で消えてしまった。




