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66 族長(モジャ)としての誇り

「俺は『モジャ・モジャ・モッサール・ダ・フロア』獣使いの一族、モッサールの最後の一人だ」


 ダメだ! これは笑ってはいけない! こんもりしたモジャモジャアフロで更に名前がモジャモジャモッサールって……名は体を表しすぎだ!


「変わった……お名前ですね」

「モジャとはモッサールの言葉で勇気ある者、強き者、すなわち族長や長を示す言葉だ。そしてその中のモジャ、つまりは族長の中の族長という意味だ」


 これだけ真面目な態度で自己紹介をされてしまっては笑うに笑えない、そういう現地人の言葉があるという事で心にとめておこう。


「モッサールの掟は……受けた恩は必ず返せ、受けた仇は命を賭しても必ず果たせ。というものがある。俺は森の仲間を助けてくれたあなた達に恩をしたい」

「お気持ちはありがたいのですが……」

「それに! あなた達はヘクタールを憎んでいるようだ。ヤツは我ら一族の敵! 俺の命を懸けてもヤツは我が手で……殺す!」


 そりゃあ一族を全て殺された相手なら命を懸けて復讐をするというのも頷ける。

 そして、毒沼で猿を一網打尽にしなくてよかったと私は安堵した。

 下手な事をしていたらフロアは命を懸けても私を殺そうと追い続けるところだったのだ。


「あの……一つよろしいですか?」

「何だ?」

「あなたはモッサール一族最後の生き残りとお聞きしました、しかしオンスさんに聞いたところあなたは赤ん坊の頃に旅劇団に預けられたと聞きます。ではなぜ自分の名前だけでなく由来までご存じなのでしょうか?」

「父さんだ」

「お父様? フロアさんのお父様はご存命なのかしら?」


 確かにおかしな話ではある、フロアが一族の最後の生き残りだというなら父親が生きているわけがない。


「いや、父さんは俺が寝ていると出てくるのだ、一族の無念をはらしてくれと言っている」


 ……日本でいうところの夢枕に立つというやつか、よほど無念だったのだろうな。


「そして、最後に会った母さんが教えてくれた、俺の名前や父さんの事、モッサール族の無念を……だから俺は絶対にヘクタールを殺すのだ!」


 フロアは何があってもヘクタールを殺すと決めているようだ。私達にとってヘクタールは共通の敵である、確かにここは一緒にいた方が良いかもしれない。


「わかったよ。ボクはユカ・カーサ。フロア、ボク達は君と一緒に戦うよ!」

「感謝する! ユカ」


 そしてフロアは指笛を大きく鳴らした。辺りから大量の猿や獣が姿を現した。


「俺の森の仲間だ、あなた達を襲わないように伝えた」

「は……はぁ…」


 森中の獣が集まって来たのかというくらいたくさんの獣がフロアの指笛で集まった。

 見た目は凄いが……ものすごく臭かった。しかし下手にそんな事をいうわけにもいかない。


「森の食い物だ、俺の仲間達が取ってきてくれた、一緒に食ってくれ」

「ううっ、(わたくし)はしたない真似できませんわ……」

「ルーム、今日はフロアさんに合わせるんだ。森では森の掟に従った方が良い」


 ホームの言っているのは日本のことわざでいう『郷に入っては郷に従え』である。

 ここでは動物達と一緒に手づかみで森の幸を味わった方がいいのだろう。


「あーしは野宿とか慣れてるからこういうのは問題ないよ」

「そうだね、今日はここにいるみんなで食べよう!」


 動物達に迎えられた歓迎の宴は夜遅くまで続いた。そして疲れた私達はそのまま眠りについてしまった。



 真夜中、私は寝付けずに起きてしまった。するとフロアは無防備なマイルさんの傍で小さく丸まって寝ていた。


「ユカ?」

「マイルさん起きていたのですか?」

「ちょっと、放っておけなくてね……」


 よく見るとフロアはマイルさんの大きなおっぱいにしがみついていた。


「マイルさん! いいんですか?」

「……いいんだよ、このままにしてあげな」


 マイルさんは優しげな眼でフロアを見ていた。


「かーちゃん……かぁちゃん……」


 フロアは寝たまま、小さな子供のようにか細い声を出しながらマイルさんにしがみついていた。

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