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670 現実と疑似感覚と複製と

 ボク達は大魔女エントラ様の異空間で一か月以上本や資料を調べ続けた。

 元の世界に戻れば時間は一瞬しか進んでいないと聞いたので安心して本を読んではいたが、あまりの量の多さに全員がウンザリしていた。


「お調べになりたい事はもうありませんか?」

「はい、大体わかりました。ありがとうございます」

「ご利用ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております……」


 ボク達がビブロスに最後にお礼を言うと、機械の身体で出来たゴーレムは沈黙した。

 きっとビブロスはボク達が来るまで何千年以上も人が来るのを待ち続けていたのだろう。

 そう考えると僕は少し切なくなってきた。


 大魔女エントラ様の作った異空間から元の場所に戻ったとしても、この記憶が消えるわけでは無いのは彼女から聞いている。

 だからこの一か月近くの本を読んでいた事や資料を調べていたのはボク達にとって無駄な時間では無かった。


 とはいえ、流石に一か月近く本と戦っていたようなものなので、全員かなり精神的に弱っている。

 この状態で下手に元の空間に戻っても普段と同じ動きが出来るとは思えない。


「あの、エントラ様。ここで過ごした時間って向こうに戻ったら一瞬なんですよね?」

「そうねェ。こちらの一か月は元の世界では一瞬にも満たないだろうねェ」


 それならボク達はもう少しここで休むなり体の調子を取り戻すなりした方が良さそうだ。

 幸い食料はまだ備蓄が少し残っている。


 それにこの空間に持ち込んだ図書館の大半の物はそのまま使う事が出来たので、ここは生活するには十分な環境になっていた。


「よし、それじゃあみんな疲れただろうから少し休もう。その後で一か月で鈍った身体を元に戻そう!」

「そうですね。僕も剣の腕が鈍らないようにしないと。父上が言っていました。訓練は三日サボると取り返すのにその倍以上の時間がかかると」

「それじゃあ一か月だったら三か月は訓練しないと取り返せないのでは?」

「フフフフ、少し考え過ぎじゃないかねェ」


 大魔女エントラ様が笑っている。

 何故なのだろうか、身体が鈍っているのを取り返すのに時間がかかるってのは事実だと思うんだが。


「実はねェ、種明かしすると、この空間は精神だけの空間なのよねェ。だから実際の時間は一瞬、ここで食べ物を食べたとか感じていたのは疑似的感覚だったのよねェ」


 ボクには彼女が何を言っているのかがわけわからない。

 それに輪をかけてソウイチロウさんがもっとワケのわからない事を言い出した。


『なるほど、バーチャル空間、もしくはメタバース空間みたいなものか。実際の世界とは異なる場所で精神だけを移動させたって事だな』

『ソウイチロウさん、ボクにわからない言葉で頭の中で勝手に呟かないで下さい!』

『あ、ああ。悪かった。そうだな、簡単に言えば、魂だけ別空間で動いている、肉体を使っているわけでないので体は鈍っていない。そしてその身体の方の時間はほんの一秒にもならない時間だから今戻っても身体には何の変化も無い』


 まあこの説明ならどうにかわかるかな。

 つまりは大魔女エントラ様の作った世界は魂だけの世界だという事なのか。

 しかしそれだとあの機械とかはどうやって持ち込んだのだろうか?


「あの、エントラ様。この世界が魂だけの世界みたいなものだというのは分かったのですが、あの図書館の機械はどうやってここに持ち込んだんですか?」

「ああ、それはねェ。実は複製魔法を使ったんだねェ。なのでここにあるのは(わらわ)の作った複製で、本物は元の空間に残ったままってワケだからねェ」


 何だかわかるようなわからないような説明だ。

 だが一つ言えるのは、ボク達が元の世界に戻ったらそこにあったモノはそのまま残っているという事。


「さて、それじゃあ少し寝て精神が落ち着いたら元の空間に戻ろうかねェ」

「はい、わかりました」


 ボク達はこの図書館のある空間でゆっくり休み、元の世界に戻る事にした。

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