669 タイミングは一瞬!
フワフワ族の言っていた黄金のコンドル。
それは古代文明の大型飛行艇グランナスカの事だった。
ボク達はビブロスの資料からグランナスカが現在エルドラドのどこかにある事を知った。
今ボク達のいる場所からそう遠くない場所にグランナスカはあるらしい。
グランナスカ、それはバロールに対抗できる古代文明の力だ。
『ユカ、私はグランナスカの太陽エネルギーを使えばバロールを倒すことが出来るのではと思うんだが』
『太陽エネルギー? ソウイチロウさん、それは一体どういうことですか』
古代人にも匹敵するだけの知恵と知識を持ったソウイチロウさんのアドバイスは言葉の意味が理解しにくいが実は得ている。
太陽エネルギーというのは、太陽の力と考えていいのだろうか。
つまり、グランナスカは太陽の力で動く船なので、その動く力を全部攻撃につぎ込めばバロールの遠距離攻撃や重装甲でも打ち破る事が出来るかもしれない。
「太陽エネルギーは、ソーラーパワーなどとも言われている太陽の光を大きな板等で受け止めて力にするエネルギーの事だ。グランナスカは古代文明の力でその太陽エネルギーの収束や発動が可能なのだろう。その力を使えばバロールを打ち砕く事も出来る」
やはりボクの推測は合っていた。
ソウイチロウさんの言っていた太陽エネルギーを使えばグランナスカは空を飛び、バロールに一矢報いることが出来るやもしれない。
それならば早くグランナスカを探さないと。
ビブロスで調べたグランナスカのある場所は、エルドラドの中にある放置された水辺の公園のようだ。
そこに行くにはチカテツという洞窟を通って大広間四つ分くらいの場所らしい。
グランナスカに関する資料は他にもあったが、中身が難しく、大魔女エントラ様やソウイチロウさんでも全部を理解することは出来なかった。
だが何かの部品が足りなくてグランナスカは飛べなくなってしまったという事だけは知ることが出来た。
その部品の形、どこかで見たような気がするんだが……どこで見たのか思い出せない。
「とにかくそろそろここを出よう。流石にもう一か月以上本を見続けてウンザリしてきた……」
「えェー、妾はまだあと数か月くらいはここにいたいと思ったんだけどねェ」
「でもここってエントラ様の作った場所ならいつでも来ようと思えば来れるんですよね」
「ま、まあそういわれればそうだねェ。ここならビブロスも動いているし古代の資料をバロールに焼き払われることも無いからねェ」
大魔女エントラ様は渋々ながらもこの場所を出る事に同意した。
「さて、それじゃあそのグランナスカを探しに行こうかねェ」
大魔女エントラ様が杖を掲げると、図書館になっていた空間に元の世界への扉が開かれた。
「気を付けるんだねェ、向こうに出た瞬間透明化や感知系疎外の魔法が切れているからねェ。かけ直す一瞬のタイミングをバロールに感づかれるかもしれない」
その可能性は十分にある。
ボク達がエルドラドでバロールに見つからずに移動出来ていたのは大魔女エントラ様の魔法のおかげだった。
だが今はボク達も彼女も別空間にいたのだ。
元の場所に戻った瞬間魔法をかけ直すまでの一瞬が命取りになる可能性もある。
「でも妾が最初に出るわけにはいかないからねェ。この空間を開いたり閉じたりするのは妾だけが出来る事、だから全員が戻るまで最後までいないといけないからねェ」
そう考えると戻るのがかなり危険な事だとわかる。
ボク達が戻った瞬間、熱か音か魔力かはわからないが、バロールに居場所を知られてしまう。
攻撃を受ける前に魔力結界を作れればいいが、そのタイミング前に狙われる事も十分にあり得る。
ボク達が今やるべき事は、いかにバロールに見つからないように元の空間に戻るかだ。
タイミングはほんの一瞬しかない!




