668 地に堕ちた翼
「これがグランナスカ……」
グランナスカ、それはまさに黄金のコンドルと言うに相応しい巨大な羽を広げた鳥の形をした船だった。
フワフワ族の伝承に伝わっていた天空と地上を行き来する黄金のコンドルとはこのグランナスカの事なのか。
『凄い! これはまさに最高の宇宙船だ。成程、この性能なら大気圏突入能力を持っていてもおかしくは無いな。フワフワ族の言っていた黄金のコンドル、それはこのグランナスカのことで間違いないだろう』
あれだけ色々な文明、技術に精通したソウイチロウさんがここまで驚くとは。
このグランナスカという巨大な鳥型の船は彼が感心するほどの性能だという事か。
ボク達はエルドラドに来る際にジバ総司令にアルカディア最高の船、ヴァルジオンを借りた。
だがこのグランナスカはそのヴァルジオンをサイズも性能も全て上回っている。
ソウイチロウさんが言うように高い闇と地上を行き来できるとするなら、この船ならあの空帝戦艦アルビオンに勝てるかもしれない。
「グランナスカ、全長……40メールト、全高、15メールト、全幅……翼まで含めると100メールト」
この単位の意味が良く分からないが、グランナスカはかなり大きな船らしい。
もしこの船があればボク達は地上に戻る事もできる。
壊れていない事前提での考えだが、あれだけの船がそう簡単に壊れるとはとても思えない。
「最新型大型飛行艇グランナスカ。ソーラークリスタルエネルギーを大型魔導増幅回路で改修した最高の飛行艇。ソーラークリスタルエネルギーを用いたビッグバンレーザーは武器としても最高の能力を発揮する。魔技師ダルダロスによって作られたモノで、黄金巨神ダルダロスの前に制作された」
ビブロスが教えてくれる情報は、グランナスカの凄さを色々と伝えてくれた。
どうやらこの船は太陽の光を動力とし、動く事が出来るらしい。
また、その太陽の力を一気に集めた武器とする事で、どのような敵すらも打ち砕く光の矢を放つことが出来るようだ。
『ユカ、どうやらバロールに勝てる方法がわかったぞ』
『ソウイチロウさん、本当ですか!?』
ソウイチロウさんはグランナスカの資料から、あのバロールを倒す方法を見つけたというのだ。
『だがその為には憶測が正しい事が前提だがな。現在グランナスカはどこにあるか、それがいま最も重要な事だ』
なるほど、グランナスカを使ってバロールに一撃を加えるというのか。
確かにそれにはグランナスカがこのエルドラドにある事前提の話になる。
いくらグランナスカを使えばバロールを倒せるとしても、その肝心な機体がここに泣ければ机上の空論で終わってしまう。
「ビブロス、グランナスカは今どこにあるか教えてくれないか」
「グランナスカ、グランナスカ……サテライトビジョン起動。現在地把握……発見!」
「見つかったのか!」
ボク達が見たビブロスの水晶板に映ったのは現在のグランナスカの姿だった。
それは長年に渡り蔦に絡みつかれた巨大な鳥といった感じだ。
その機体のある場所は地図から把握して今ボク達のいる場所からそう遠くはない場所だった。
「みんな、グランナスカの所に向かおう!」
「ちょっと待つんだねェ、焦るんじゃないよ」
すぐにグランナスカの場所に向かおうとしたボクを止めたのは大魔女エントラ様だった。
「ここの時間は外の一瞬って言ったろう。だからもう少しじっくり調べてからでも遅くは無いからねェ」
迂闊だった。
確かに今焦って外に出たとしても、グランナスカが動かない場合もある。
そうなるとただのぬか喜びだ。
「とりあえずもう少し調べてみた方がいいからねェ」
「わかりました。そうします」
ボクはグランナスカに関する資料をさらに調べることにした。
「何という事だ! これじゃあ飛べないじゃないか!」
大魔女エントラ様の言った通りだ。
グランナスカはバロールとの戦闘でこの地に堕ち、そのまま動かなくなっていた。
ボク達はどうにかしてあのグランナスカを再び動かす方法を考えなくてはいけない。




