667 大型飛行艇グランナスカ
「軍部、メインシステム検索中、検索中……バロール、検索完了。関連項目十万少し……」
どうやらビブロスによるバロールの検索が完了したようだ。
これらの資料は紙の本には全く書かれていなかった。
実際、軍部と呼ばれる場所以外には資料をわざと残していなかったのだろう。
「バロール、ゴルガによって作られた破壊巨神の一体。破壊巨神は三つ、もしくは四つ存在すると言われている。バロールはその中でも中距離戦闘に特化した機体。巨大な眼部からの破壊光線は数十万度にも達し、オリハルコンですら焼き払う」
少しビブロスが調べただけでバロールに関する資料がこれだけ出てきた。
実際ボク達はあのバロールの破壊力を目にしているので、オリハルコンですら焼き払うのを目撃した後だ。
「ありがとうございます。それで、あのバロールには弱点はあるのですか?」
ボクがビブロスに聞いてみると、このような回答が戻ってきた。
「バロールに弱点といった弱点は見当たらず。遠距離、中距離は眼部からの破壊光線、近接戦闘では巨大な高周波ブレードによるカギ爪でどのような物でも切り裂く、また、全身はオリハルコンの装甲で作られているので普通の武器では傷一つつけることは出来ない」
まさに無敵の怪物そのものだ。
だが弱点が無いと言われても、はいそうですかと退くわけにはいかない。
この怪物を野放しにしておくとそのうち地上に降りてきたが最後、世界が破壊し尽くされてしまう。
「軍上層部はこのバロールと戦う為、魔技師たちを結集させ、ついに対等に戦える兵器を作ることに成功した。それが黄金巨神である。だがダルダロスの制御は普通の技師には無理だった。その為、魔技師達のリーダーであるダルダロスは自らの意識を黄金巨神の一部とすることで、その制御に成功した。それがアルカディア最強の戦力である黄金巨神ダルダロスである」
ダルダロス、それはボク達が戦った最強の金色に輝く巨大なゴーレムだ。
「ダルダロスはバロールを破壊するため、地上に降り、空中戦艦ザイダヴェック製造中の基地で戦った。だがバロールは破壊には至らず、戦いの被害は増える一方だった」
それがフワフワ族の遺跡でボク達の見た、あの黄金巨神ダルダロスとバロールの戦いの記録だったのか。
「最終的に数週間、数か月戦いは続き、地上の大半は焦土と化してしまった。ゴルガもこの時滅びたと言われる」
ゴルガ軍国、かつて太古の時代に存在した最強の帝国だ。
だがそのあまりにも強大な力は自らも滅ぼしてしまったということらしい。
「それでも戦いは決着がつかなかった。そこで天空に避難していたアルカディア上層部は最終手段としてバロールを封じることにした。それは、オリハルコンで作られた空の人工島そのものにバロールを移動させてしまうことだった」
まさか、それがこのエルドラドなのか。
「建設途中だった第二都市エルドラド。それは計画最終段階で破棄され、完成間近で住民の避難が呼びかけられた。無人になったエルドラドは、バロールを閉じ込めるための牢獄に大幅改造された」
それでここは長い間誰も住んでいなかったのか。
「地上のダルダロスはバロールを捉え、建造の完了した大型飛行艇グランナスカの推力を使いその巨体を宇宙空間に打ち出すことに成功した。宇宙に放り出されたバロールはダルダロスとグランナスカの力でエルドラドの中に閉じ込められ、その入り口は厳重に硬く閉ざされた」
グランナスカ、初めて聞いた名前だ。
しかし高い闇と地上を行き来できる船というのは、フワフワ族の言い伝えの黄金のコンドルの可能性は高い。
「ありがとう。ところでグランナスカって何?」
「グランナスカ、グランナスカ……検索中、検索結果、一万件未満」
そしてビブロスの見せてくれたグランナスカの姿が水晶に映った。
それはまさに、黄金のコンドルと言えるような金色の巨大な翼を広げた鳥のような姿だった。




