657 光を避けろ!
アルカディア目指して高速艇ヴァルジオンで飛んでいたボク達を襲ったのは、アルカディアから放たれた光線だった。
大魔女エントラ様のとっさの魔法で直撃は免れたが、その威力は相当の物だった。
リフレクトウォールの魔法で弾いた光線は別の方向に飛んでいき、そこそこの大きさの岩を瞬時に消滅させるほどだった。
「ひー、あんなものの直撃を喰らったらオシマイだな」
「アンタ、ボヤボヤ言っているヒマがあったら前方をしっかり見張るんだねェ! あの一撃がアレだけで終わるとは思わないからねェ」
確かにあの光線が一回限りの技だとは思えない。
あれが本当にバロールの放った光線だとすると、また襲ってきてもおかしくはない。
「とにかく早くあの島に到着した方が良さそうだねェ」
「え? でももし近づけば反対に光線の攻撃を喰らいませんか?」
「ああいう攻撃ってのはねェ、遠くは攻撃できても近くに寄ると自らの威力の大きさに自滅しかねないから攻撃できないって場合があるからねェ」
なるほど、確かにそれなら敵の懐に飛び込んでしまった方が攻撃を受けなくて済むわけだ。
『ユカ、私に身体を貸してくれ。どうやらこの中でこのヴァルジオンをまともに動かせるのは私だけのようだ』
『え? でも今は船が勝手に動いてくれているのでは?』
『自動操縦には限界がある。まさかバロールの攻撃を避けながらこの船が無事に到着できると思うか?』
正直ボクにはわからない。
でもソウイチロウさんに任せた方がまだ可能性があるかもしれない。
なぜなら彼はこの中で唯一実際に金属で出来た空飛ぶ船に乗った事があるからだ。
『わかりました。お願いします、ソウイチロウさん
『わかった、まあ任せな。私はこれでもアサルトドラグーンやグラディアス3Dでラストステージまで行った事があるからな』
本当にこの人の言うことは暗号か謎の言葉すぎて何を言っているのかわからない。
だがかなりの自信があるみたいなので彼に任せるのが一番良さそうだ。
「みんな、ここはボクが操縦する、シートベルトをつけてしっかりと椅子に固定して!」
「シートベルト? このよくわからない椅子についたいくつかの帯のようなものかのう?」
「そう、それです! 早くしてください!」
ソウイチロウさんは全員を椅子に固定させると、船の操舵席に座った。
「自動運行モードオフ、ここからは手動運転に切り替えだ!」
ソウイチロウさんは何やら手慣れた手つきで水晶に映った何かをいじり出した。
その後彼は、不思議な形の舵輪らしきものを握り、一気に船を加速させた。
「よし、最高速度で一気に突き抜ける! 全員強烈なGに耐えてくれよ!」
Gってのが何かわからないが、ソウイチロウさんがヴァルジオンを最高速度にすると、何故か身体が後ろに張り付けられるような衝撃が襲ってきた。
「な、何じゃこれは!」
「なんだか強烈な重力魔法を喰らっているみたいだねェ、重力無効の魔法を使ってみるかねェ」
流石は全員レベル60以上の冒険者だ。
この強力な重力魔法のような衝撃でも全員がどうにか耐えている。
「誰か! 前方から光が見えるか確認頼む!」
「前方? 島の右の方から何か光が見える!」
「わかった!」
光のことを聞いたソウイチロウさんは舵輪を左に切り、足元の何かを強く踏み込んだ。
その直後、先程までヴァルジオンのいた場所を一条の光線が襲った。
もしソウイチロウさんが船の場所を動かしていなければ、ボク達は光に焼かれていたかもしれない。
「どうにか避けることが出来たみたいだな」
「ユカさん、前方! 前方から光が来ますっ!」
「何だって!」
ソウイチロウさんはとっさに光線を避けようとし、大魔女エントラ様はリフレクトウォールの魔法を使おうとした。
だが二人の行動よりも早くバロールの光線はヴァルジオンの船体をかすめ、翼の半分が焼き砕かれてしまった。
「しまった!」
ボク達はあと少しでアルカディアに到着するというところで、バロールの光線によりヴァルジオンにダメージを受けてしまった。




