652 太陽砲台ソルブラスター
「皆様にはこのアルカディア最速の高速艇『ヴァルジオン』をお貸し致します」
ジバ総司令はそう言うとボク達を浮遊要塞アルカディアの地下に案内した。
そこにあったのは翼のついた不思議な形の船だった。
まるで鳥のようにも見えなくもない。
船の大きさはそれほど大きくはなく、ボク達全員が乗ると少し狭いかもといったくらいだった。
「狭く見えるのは上の部分だけだからです。中に入ってみてください」
「ここは!」
外から見た船はあまり大きく見えなかったが、中にはシートとシーツの二匹の大きな双子の狼が寝転がれるくらいの広い空間があった。
「この船は元々探査用の資源採掘のための高速艇です。あまり居住空間はありませんが貨物を乗せる箇所はそれなりの広さが確保できております。この船でしたら全員十分に乗ることができるかと思われます」
「ジバ様、ありがとうございます」
「いえ、礼にはおよびません。我々には到底使い切れないものなのです。もし我々の精鋭がこの船に乗ったとしてもエルドラドまではたどり着けないでしょう。バロールの放つ破壊光線は黄金巨神ダルダロスやウルティマ・ザインの持つ光の矢にも劣らない威力です。黄金巨神ダルダロスと戦うことの出来た皆様でしたらこれを使いこなせるかとは思います」
ボクはここに来て非常に不安に思っていることがあった。
「おや、ユカ様。一体どうなされましたか?」
「いや、実は気になっていることがありまして」
「それはどういったことでしょうか」
ボクが不安に思っているのは、ボク達がこの高い闇にいる間に地上をあの空帝戦艦アルビオンが無茶苦茶にしてしまわないかといったことだ。
別にバロールと戦うことは苦だとまでは思っていない。
それよりも地上に残してきた父さん母さんやゴーティ伯爵様達が無事にいるのかが気になっていた。
「実は、ボク達がこの忘れ去られし者達の集落、つまり浮遊要塞アルカディアに来たのには理由があります。地上を焼き尽くそうとしているゴルガの負の遺産、空帝戦艦アルビオンを倒すためなんです。ここでボク達がこうしている間にもアルビオンは地上をどんどんと攻撃しているかもしれないのです」
「なるほど、そういうことでしたか。わかりました。ユカ様、我々は創世神エイータ様の信徒として共に戦う貴方方のために力を貸しましょう。本来地上の勢力には不干渉を決めていた我々アルカディアの民でしたが、事態は急を要します」
信徒というのは少し違うけど、ここは話を合わせておこう。
なによりジバ総司令はボクの言うことを聞いてくれた。
「誰か、衛星型反射砲ソルブラスターの調整を頼む」
「了解しました!」
ジバ総司令の命令を受けた兵士達は何か水晶の上の文字を色々といじり、何かをやっている。
『どうやらあれはこの世界のコンピューターみたいなものだな、ということは今やっているのは座標計算やレーダーの調整といったところか』
ボクには理解不能だが、ソウイチロウさんはこの後何が起きるのかわかっているようだ。
「ソルブラスター、照準セットしました。目標空帝戦艦アルビオン、現時点で南方方面を航行中」
「了解、ソルブラスター照準、航行速度に合わせ、直撃させろ」
「ソルブラスター、発射準備完了!」
ボク達が見ている前で水晶には何か機械で出来た小さな島が映っている。
その島には巨大な筒がついていて、その筒が激しく光り出した。
「太陽砲台ソルブラスター、発射!」
兵士がそう言ってレバーを引くと、光り輝いた砲台が火を噴いた!
シュバッッッ!
「な、何という威力、これは下手な魔法より破壊力があるねェ」
「うむ、この威力、ワシの雷撃以上かもしれぬな」
小さな島から放たれた一条の光は地上へ激しく放たれた。
その光は小島から遠く離れた浮遊要塞アルカディアにいるボク達にすら見れたくらいだ。
「ソルブラスター、アルビオンに弾着確認。ただし直撃には至らず」
「敵の被害状況はどうなっている」
「ですが、そのままでは航行不能な様子で、急遽不時着を要する模様、作戦は成功です!」
これは確かに地上に干渉しないというだけの力だ。
ボク達は古代文明の凄さを全員で感じていた。




