64 魔素による汚染
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俺はダイブイーグルに掴んでもらい、捕まっていた所を助けてもらった。
「助かったぜ、ありがとうな!」
クエェェエエェエ!
「あのあたりで下ろしてくれ」
俺は森の集落跡のはずれの空き地に下ろしてもらった。
「ありがとうよ! また頼むぜ!」
ダイブイーグルは上空で一度旋回してから遠くに去っていた。
「あれからどれくらいたつのかな……」
本当なら俺はあまりここには来たくない。集落跡には思い出したくない思い出があるからだ。
焼けて朽ち果てた集落の跡には俺が作った墓がいくつもある、まあ俺だけの力ではなく墓を作るのは森の動物に手伝ってもらったんだが……。
「みんな、また来るぜ」
そう言うと俺は猿の仲間達と花を墓に供え、その場を離れた。
「さて、ねぐらに戻るか」
俺は猿達に盗ませた獲物を吟味する為に俺のねぐらにしている廃屋にたどり着いた。
俺は元々森で過ごすモッサール族だ、雨風さえしのげればどこでも生きる事は出来る。
そういう意味でこの猟師小屋は俺には最適の場所だ。
どうやらこの小屋の元の持ち主は熊にやられて死んだらしい。
だが俺には猛獣の熊は敵ではない、むしろ俺の敵は一族を皆殺しにした人間共だ。
「さて、今日の獲物は何だろうな」
人間嫌いの俺だが、たまに森に来る人間の持ち物が必要になる事がある。
流石に動物だけでは使えない道具などがあるからだ。
「ケッ使えないな!」
女物の服だとこのままでは少し細工しないと使えない。
今回の獲物はハズレだ。どうやってこれを売るかを考えないと。
出来るだけ俺は人間に会いたくない。しかし女物の服を売るとしてどんな方法で売ればいいのか……これは困った。
「商隊を襲ったのは失敗だったかな、さてどうやってこれを売ればいいのやら……」
変装してまで人に会うのも俺のプライドが許せない、だからと言って動物達に物を売りに行かせるのもおかしい光景だろう。
「どうすればいいのかな……?」
そんな俺の傍に子猿がやって来た。どうやら頑張って獲物を持ってきたのを褒めてもらいたいようだ。
キキッキッキキ
「可愛いな、お前……俺のいう事を聞いてくれたんだな」
子猿は嬉しそうに黒い丸い宝石みたいなものを手に持っていた。吸い込まれるような綺麗な怪しい黒だ。
「お前……これをどこで手に入れたんだ?」
ギギッ! ギャギャッ!!
おかしい! 子猿の様子が普段と違う。苦しそうに倒れもがき苦しむ子猿を見て、なんだか物凄く気持ち悪い物を俺は感じた。その時……!
「森外れの小屋、見つけたぞ! 魔獣使い!」
「大人しく捕まれば今でしたら少しは罪が軽くなりますよ!」
「私としては不本意ですが、大人しくお捕まりあそばせ」
……何故ここが分かった! 今はコイツらに構っている場合じゃないんだよ!
「黙れ! 今はお前らに構っている場合じゃないんだ! 俺の仲間が死にそうなんだよ!」
「えぇっ! それって……」
子猿はジタバタしながら黒い宝石から流れ出す黒い霧に包まれていた。そして、どす黒い緑色の肌に少しずつ変化していた。
「どうなってるんだよ! 誰か教えてくれよ!?」
「これは……魔素の汚染ですわ!」
「おいガキ! それはどういう意味だ!?」
「もう少し口の利き方を勉強なさいませ! 私は魔導士のルーム・レジデンスですわ」
「ルーム! 魔素って何だよ」
魔素……ルームが言っていたそれは邪悪な魔力の塊である。
どうやらこの子猿は魔素の塊の黒い宝石を持ってしまい取り込まれてしまったのだ。
このままではゴブリンになってしまうらしい。
「残念ですがこの子はもう助かりませんわ、汚染されてゴブリンになる前に貴方の手で殺して差し上げてくださいませ」
「ふざけんな! 俺に森の仲間を殺せというのか!! だから人間は嫌いなんだよ!!」
「……私なら、その子を助ける事が出来るかもしれません」
「エリア……出来るの?」
俺の目の前でエリアと呼ばれた少女が子猿の手を優しく握った。