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651 乗り掛かった舟

 今ボク達のいる指令室から少し離れた場所にあるアーカイブセンターがある。

 本来なら歩けばかなりの時間がかかる場所だ。


 だがアーカイブセンターにいた大魔女エントラ様達は瞬時にこの場所に来ることができた。


「これが我がアルカディアの持つ瞬間移動技術です。我等はこの技術のおかげで武力的に勝るゴルガから生き残ることができたのです」


 なるほど、古代の神殿にあったワープ床と呼ばれる技術はこれの応用だったのか。


「何だい何だい。折角人が古今東西の面白そうなデータを見ていたというのにねェ。でもどうやらそうも言ってられないみたいだねェ」

「エントラ様、突如お呼びして申し訳ありません」

「どうやら、ただ事ではなさそうだねェ」


 ジバ総司令は黄金巨神ダルダロスの放った光の剣、そして第二の人工島エルドラドのことを大魔女エントラ様達に伝えた。


「なるほどねェ。確かにそりゃぁ(わらわ)達のせいといえばそうだよねェ」

「ですがバロールが封印を破って現れたとしても、肝心の黄金巨神ダルダロスが動かなければ我等に太刀打ちする術はございません」


 悲痛な表情でアルカディアの軍人達がボク達にそう伝えた。


「仕方ないねェ。そのバロールってののデータはアーカイブセンターにあるのかねェ」

「え!? まさか、貴女方がバロールと戦おうというのですか!」

「乗り掛かった舟だし、それにどうやら話を聞くと誤解とはいえ黄金巨神ダルダロスを再起不能にしてしまったのが(わらわ)達みたいだからねェ。ここは一肌脱ぐしかなさそうだねェ」

「うむ、ワシも責任を感じておるからな。今回はえんとらに協力してやることにするわい」

「……感謝致します。我々がご協力出来ることでしたら何でも致しますので、是非ともよろしくお願い致します」


 ボク達は流れ的にもう一つの人工島エルドラドに行き、封印が解かれてしまったバロールを倒すことになった。


「さて、それでは(わらわ)達はもう一度アーカイブセンターに戻ってバロールの資料を確認しないとねェ」

「それには及びません。アーカイブセンターのデータはここでも閲覧可能です。必要なデータがありましたら是非お伝えください」

「あらまぁ、そりゃあまた随分と便利なものだねェ」


 どうやらもう一度アーカイブセンターに行かなくてもここで資料を見れるという話らしい。

 これがソウイチロウさんの言っていたクラウドデータというものなのかな。


『ここでデータが見れるならクラウドデータで間違いないだろう。さて、私もデータからどうやったらバロールを倒せるか考えてみることにしよう』


 ソウイチロウさんはボクと意識を共有しているので、ボクの考えていることにすぐに返答してくれる。そのおかげで助かったことは一度や二度ではない。


 ボク達はバロールのデータを全員で確認した。

 巨大な水晶に投影され、映っていたものはボク達が古代遺跡で見たよりも鮮明なものだった。


「これが、バロール」

「そうです。我等アルカディアの先祖達が命がけで残した破械神バロールのデータです」


 そこに映っていたのは巨大な目玉にカギ爪、足の無い異形の巨大な怪物だった。

 どうやらその全身はオリハルコンで作られていて、魔法防御を施されているため、普通の武器では傷一つつけることができなそうだ。

 この怪物が黄金巨神ダルダロスとほぼ同じ強さだとすると苦戦は免れない。

 だがその封印を解いてしまったのがボク達のせいだとするなら、戦わないわけにはいかないのだ。


「なるほどねェ。まあどうにか戦えない相手ではないだろうけど、どうやってそこまで行くかだねェ。もう一度岩を使ってあそこまで飛んでいくとしても、その途中でバロールに見つかったらねェ」


 大魔女エントラ様がそう言うと、ジバ総司令が返答した。


「ご安心下さい。我がアルカディアには宇宙空間を飛べる船がございます。どうぞそちらをお使いください」


 どうやらこの高い闇を移動するための船がここにはあるようだ。

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