649 アルカディア観光
アーカイブセンター?
図書館とは違うのだろうか。
「なんだかそれ面白そうだねェ。それはどこにあるのかねェ」
「アーカイブセンターはこの居住ブロックとは別のアカデミーブロックに存在します。そこには古今東西のあらゆるデータが蓄積されているといっても過言ではありません」
「おや? でも図書館でないなら、どうやって資料を保存しているのかねェ」
「それは記憶メモリーに保存しているので、引き出そうと思えばどのようなデータでも瞬時に引き出すことができるのです」
なんだかすごい話を聞いた。
「一部のデータでしたらこの居住区画のメモリーセンターで見ることも可能です。この部屋にもそのためのクリスタルがありますから」
「へェ、それは凄いねェ。ここでも見ることができるんだねェ」
『それって、大型クラウドサーバーみたいなものだな』
『だからボクにはあなたの言っている意味が伝わってないんですってば!』
ソウイチロウさんの言葉は謎の単語が多すぎてたまに頭が痛くなる。
『ああ、悪かったな。クラウドサーバーというのは、データを蓄積しておくことで別の場所でも同じように見ることができるためのシステムの名前なんだ。しかしこの世界でクラウドサーバーのようなものがあるとはな。』
その説明で何となく理解は出来たものの、ソウイチロウさんやこのアルカディアの人達の会話はまるで異界の会話だ。
ソウイチロウさんはその会話に何の問題も無くついていけている。
ここで呆気に取られて茫然としているのはむしろボク、ホームさん、フロアさん、サラサさん、それにシートとシーツの双子の狼くらいのものだ。
ルームさんやアンさん、それに大魔女エントラ様は初めて見るものばかりでかなり興味津々といった様子だ。
エリアさんは何かを思い出しているのか、この場所を見て物思いにふけっているようだ。
「エリアさん、何かあったんですか?」
「え? ええ、特にそういうわけではないですが、ここを見ていると何か昔のことを思い出せそうな気がするのです。私の失われた記憶、過去に私が何をしていたのか……ぼんやりですが少しずつ思い出せそうなんです」
なるほど、エリアさんは創世神の半身、それならこの光景を見ていたとしても何もおかしい物ではない。
「ユカ、妾はそのアーカイブセンターに行ってみるからねェ。何か新しく分かった事があったら伝えるから」
「お師匠様、私もついて行きますわ」
「ワシも興味あるのう。この奇怪な天空島に何があるのか知りたくなってきたワイ」
大魔女エントラ様、ルームさん、アンさんの三人がアーカイブセンターに向かった。
ボクは浮遊都市アルカディアの観光をホームさんやフロアさん、サラサさん、それにエリアさん達と一緒にすることにした。
シートとシーツは疲れたのか部屋の所で寝ているようだ。
「ここは凄いですね」
「俺、こんな場所おとぎ話でしか聞いたこと無いぞ」
「我もウルツヤ様にずっと昔に天空の島があったと聞いたくらい」
ボク達は見るもの全てに驚いていた。
馬がいないのに動く車。
フワフワ族の集落で見たような機械で出来た馬。
空を飛ぶ金属の鳥や虫のような物。
そして食べ物もボク達の知るようなものではない四角い形だったり丸い形だったりで野菜なのか肉なのかもわからない。
でも食べるときちんとそれなりの味がするので色で見分けるしかなさそうだ。
そんな風に観光をしているボク達をアルカディアの住民が見ている。
彼等にとってはむしろボク達の姿の方が見たことの無いようなものみたいだ。
町の観光を楽しむボク達だったが、そんな中にいきなり走って駆けつけてきた人がいた。
「ユカ様、至急お越しくださいませ! ジバ総司令がお呼びです!!」
なにかこれはただ事ではないといった雰囲気になってきた。




