648 浮遊都市アルカディア
『浮遊要塞アルカディア』
今ボク達のいる金属で作られた人工の巨大島の名前だ。
どうやら戦闘に特化した島の下側の部分がそう呼ばれているようで、古代文明によって作られた武器が色々と設置されている難攻不落の城塞といえる。
もしこの浮遊要塞アルカディアが本気を出して地上に攻撃をしたら地上はひとたまりも無いだろう。
だが彼らはその力の恐ろしさを知っているがゆえに地上に対しては何の干渉もしないと決めていたらしい。
彼らは自らの信じる創世神、エイータの帰還を待ち、日々過ごしていたのだそうだ。
そして彼らの待ち続けた創世神エイータ、つまりエリアさんが来たことで、アルカディアの人達はとても喜んでいた。
ボク達が先程の戦闘で傷つけてしまった兵士達は幸い死者がいなかったので、エリアさんがスキルで全員の傷を完治してくれた。
「この場にいる全ての人達の傷を癒したまえ……レザレクション!」
「おおっ! 何という力だ!」
「傷が……消えた」
「奇跡だ、まさに神の奇跡だ」
エリアさんのレザレクションは傷ついた兵士達をたちどころに全員完治させ、その奇跡の力を体験した者達はみんなエリアさんにひざまずいた。
「素晴らしい! これぞまさに創世神エイータ様のお力、貴女様は間違いなくエイータ様でございます」
「ジバ様、そこまで大げさに言われてしまいますと困ります……」
「おお、これは失礼しました」
無事誤解の解けたボク達は浮遊要塞アルカディアからエレベーターという機械で島の上部に移動した。
「何だここは!」
「途方もない場所だねェ」
「これは……伝説に謳われる桃源郷か? ワシもこのような場所は初めてじゃわい」
ボク達が目にしたのは全てが巨大な白い壁や水晶で作られたような建物の群れだった。
まだ見たことはないが帝国の都でもこれほどのものはあり得ないだろう。
『これは、想像以上のテクノロジーだな。まさに古代の空中都市そのものといったイメージだ!』
『ソウイチロウさん、この場所を知っているのですか?』
『いや、これそのものではないが、私が昔携わったゲームに出てきた空中都市がまさにこんなイメージだった、マナの空中正殿、古代都市エルザリア、蒼穹の都アシェンタ、どれもまさにこんなイメージだ』
『よくそんなに名前がポンポン出てきますね』
『まあ昔やった仕事の内容だからな、いやーしかしここはそれにも匹敵するオーバーテクノロジーの塊でワクワクするな』
ソウイチロウさんがまるで子供のようにはしゃいでいる。
ここは彼にとってもそれくらい魅力的な場所だといえるのだろう。
「皆様、気に入っていただけましたか? ここは浮遊都市アルカディア。下の部分の浮遊要塞アルカディアが武力に特化した場所だとすると、ここは居住に特化した都市ですわ。さあ、皆様のお部屋を用致しますのでこちらにお越し下さいませ」
ジバ総司令に紹介されたのはこの浮遊都市アルカディアの総責任者と言われたハララさんだった。
どうやらハララさんはジバ総司令の娘さんらしい。
「こんな場所で暮らしたら毎日快適だろうねェ。妾でもここはウキウキしてくるねェ」
「まるで子供みたいじゃな、と言いたいところじゃが、ワシもその気持ちはよーくわかる、ここは今までに見たことの内容な場所じゃからな」
「ここは間違いなく忘れ去られし者達の集落かと。我、ウルツヤ様に昔聞いた空飛ぶ島の話、これ本当だった」
みんながこの不思議で素敵な光景をとても興味深そうに見ている。
実際ボクも初めて見る浮遊都市アルカディアにはワクワクしていた。
「さて、お部屋につきましたらごゆっくりとおくつろぎ下さい。その後皆様を歓迎するパーティーを開催いたします」
「おお、宴か。これはいい酒が期待出来そうじゃな」
「妾はそれよりもここに図書館があるかどうかが気になるねェ」
「図書館……ですか? そのようなものはございませんがアーカイブセンターでしたらご案内出来ます」
「何だか面白そうだねェ」
大魔女エントラ様が何かに興味を持ったようだ。




