644 オーラの剣
光る粉は辺りに降り注ぎ、大魔女エントラ様やアンさん、ルームさんにボクまでもが力を奪われているようだ。
「な、何なのかねェ?? 妾の魔力が食われているのかねェ」
「うぐぅう、ワシとしたことが、力が入らぬわ」
どうやら共通しているのは魔力を持っている人達が全員あの光る粉で魔力を奪われているということだ。
何という連中だ!
白旗を掲げておきながらヤツラは徹底的にボク達と戦おうとしているのか。
ボクが憤り、思わず手を出そうとした時……ソウイチロウさんがあり得ないことを言った。
『待てユカ。これは、ひょっとして意味が大きく違っているのかもしれないぞ』
『ソウイチロウさん、意味が違うってどういうことですか!』
『ユカ、私達が今戦っている相手は、古代文明の力を使った連中だ。古代の考え方と現在の考え方が全く正反対だとしたら……どう思う?』
ソウイチロウさんの言っている意味がイマイチ分からないが、彼は話を続けた。
『つまりだ、白旗が降伏を意味するようになったのは古代に何かがあったからだとするならどうだろうか。つまり、例えばの話だが白旗が徹底抗戦、最後まで戦い抜くの意味だったとしたらどう思う?』
『ソウイチロウさん、もしそうだとしても、そんな状態が何故、後の時代に完全敗北の意味になるんですか?』
『そうだな、徹底抗戦したが戦い切れなかった。最後の一兵までもが負け、完全な負けを意味するようになったのが今の白旗の意味だとするなら、どう考える?』
その発想は無かった!
ボク達の時代では白旗が負けを意味する印だとしても、古代の文明がそのまま徹底抗戦を意味するものなら、これだけの敵の大攻勢も納得は出来る。
『でも、もし相手が徹底抗戦をすると言ってボク達はどう戦うんですか! やはり殺さずに戦えというんですか』
『確かにそれは難しいな。それにユカ達は全員力が抜けてまともに戦えない。今戦えるのはホーム、シート、シーツくらいだろう。他の魔力持ちは全員何かのマイナスを受けている』
そうだ。
今のボクは力が入らないのでマップチェンジスキルもうまく使えない。
そうなると頼れるのは生まれつき魔力を持たないホームさん、それとシートとシーツの二匹の狼だけだ。
「ユカ様、僕がここはくい止めて見せます」
そう言ったホームさんだったが彼の持っているのは護身用の普通のミスリルの剣だ。
ターナさんに預けた聖剣が無い状態でどうやって戦うのだろうか。
「とぉっ! はぁっ!」
ホームさんが剣を振るうと古代文明の戦士達は次々と倒れていった。
だがそれも長くは続かなかった。
パキィインッ!
「なッ‼」
ホームさんの強い力と敵の強固な装備に上質のミスリル程度の剣では全く耐えられなかった。
ホームさんは失った剣の代わりに倒した敵の剣を奪って戦っていたが、やはり高レベルの騎士の力に耐えれる剣は存在せず、剣が次々と折れ、砕けていった。
「くそぅっ‼ 折れない剣があれば戦えるのにっ‼」
何本もの剣を折ったホームさんがイラついている。
彼はそれでも折れた剣の柄を持ってがむしゃらに振るった。
ホームさんの剣に闘気が満ち滾っている。
剣は本来の色から彼の持つ魂の色に染まっていた。
その闘気は折れた剣の先に延びるエネルギーの剣のようになっていた。
「はっ、ははっ……どうやらこの窮地で新しい技を閃いたらしいや」
疲れ果てた顔のホームさんだったが何か嬉しそうな感じだった。
「伸びろ、僕の闘気、そして剣となれ!」
「な、あれは!? 闘気の剣じゃと!」
ホームさんがこの窮地で閃いたのは、闘気を剣に纏わせて放つオーラの剣だった。
これなら確かに柄さえあれば剣の先が折れていても関係が無い。
「死にたくない奴は下がってくれ。この技は僕にも手加減ができなそうなんだ!」
オーラの剣を振るいながらホームさんがそう言った。
なんと彼は、自ら新しい武器と技を生み出してしまったのだ。




