642 閃光の剣
黄金巨神ダルダロスの剣は鋭く振り下ろされ、その光の剣はボク達を襲った!
今のボク達は大魔女エントラ様の絶対防護魔法で守られているが、黄金巨神ダルダロスの閃光の剣はそんな防護魔法の障壁を次々と砕いた。
七枚あった障壁は六枚が砕け、最後の一枚が残っている。
もしこの最後の一枚が砕ければ、ボク達は全員がオシマイだ。
しかし光の剣を放った黄金巨神ダルダロスにも異変が起きていた。
ボク達がダメージを与えた右腕の付け根から激しい異音が聞こえる。
金属同士がきしむ音。
ボク達の攻撃は無駄ではなかった。
古代文明によって作られた黄金巨神にボク達がダメージを与えたんだ。
光の剣を放っている黄金巨神の右手の一部がはじけ飛んだ。
だが光の剣がそれで消えたわけではない。
力を放っている両腕は光を放ちながら少しずつ外装が剥げている。
黄金の装甲の内側がどんどんむき出しになりながらも、光の剣はボク達ごと空間を切り裂いている。
膨大な力で切り裂かれた空間にヒビが入った。
この光の剣は、本当に全てを切り裂くというのか。
下手をすれば地面すら真っ二つにするほどの力だ。
「な、何なのかねェこれは……空間が、裂ける? 割れる??」
大魔女エントラ様ですら驚いている。
黄金巨神ダルダロスは本当に光の剣で空間を切り裂いた。
バギィインッ!
木とも水晶ともつかない何かが砕けたような音が聞こえた。
黄金巨神ダルダロスが空間の壁を切り裂いたのだ。
◆◆◆
「ジバ総司令! 黄金巨神ダルダロスの消失したはずの宙域から膨大なエネルギーを感知しました!」
「何!? それは本当か!」
総司令と呼ばれた男は、ユカ達と共に消失した黄金巨神ダルダロスの反応が再び現れたことで驚愕していた。
「空間転移、いや、それより巨大なエネルギー波が感知されました。総員対ショック防御、衝撃に備えろ!」
浮遊要塞アルカディアのクルー達は臨戦態勢のまま、現状を監視していた。
「来ます! エネルギー総量、測定不能、ゲージ無限大!」
その直後、何も無かった宙域、ユカ達の言う高い闇にヒビが入り、一条の光がどこまでも伸びた。
「これは! 黄金巨神ダルダロスの神の剣! 総員、防御体制維持せよ!」
一条の光として空間を切り裂いた黄金巨神ダルダロスの光の剣はどんどん大きくなり、その長さは目では追えない場所まで伸びた。
「うわぁぁあッ!」
切り裂かれた空間ごと、ユカ達も元の高い闇に戻ってきた。
そして最後の障壁が砕け、ユカ達は大きく弾き飛ばされ、浮遊都市アルカディアの都市部の防護ガラス面をブチ砕き、そのまま都市の広場に落下した。
一方の黄金巨神ダルダロスは、自身の放った閃光の剣の反動で後方に吹き飛ばされ、同じく浮遊都市アルカディアの機動部にぶち当たり、そのまま動かなくなってしまった。
「総司令、黄金巨神ダルダロス沈黙。反応ありません!」
「何……だと、ゴルガの生物兵器らしきものはどうなった!?」
「ゴルガの生物兵器と思しき生命体数匹、都市部ブロックの防護ガラス面をぶち壊し、内部侵入しました!」
「仕方が無い……総員、白兵戦準備。武器の種類に制限はかけるな。だが住民への被害は最小限度に抑えるように心がけよ!」
総司令と呼ばれた男は浮遊要塞アルカディアの武力の全てを投入し、ユカ達の殲滅を命じた。
奇しくもユカ達はターナの言っていた忘れ去られし者達の集落、浮遊都市アルカディアに上陸したのだが、それは喜ばしいことではなく、新たな戦いの予感を感じさせるものだった。
「イタタ……あれ? ここは?」
ユカ達がどうにか立ち上がると、その前には大量の武具を身につけた戦士達が囲んでいた。
ユカ達はこのまま話し合いもできずに戦うことになってしまうのだろうか。
ユカ達に剣と銃口が突きつけられた。




