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641 電光石火の一撃

 黄金巨神ダルダロスの腕は、左右共に高く掲げられその袖から光の柱が際限なく高くまで立っているようだ。

 まるで剣だ、いや、剣というにはあまりにも巨大すぎる光の柱がボク達の目の前で高くそびえ立つ様なものだ。

 あんなものを喰らえば、魂すら砕かれかねない。


「くっ! アレは普通の魔法障壁では絶対に防げないねェ! (わらわ)も本気を出すしかないようだねぇ」


 大魔女エントラ様ですら焦るほどの威力、あの巨大な光の剣がどれ程強烈なものなのかがそれからも伺える。


 大魔女エントラ様が高く杖を掲げた、すると杖が七色に光っている。

 どうやら彼女の魔力を全て集中させたためにこのような状態になっているようだ。


「アブソリュート・レインボゥフィールドッ!」


 ボク達を巨大な七色の光の膜が覆った。


「ここから一歩でも出たらその場所は完全消滅するからねェ! 絶対にこの中から出るんじゃないよ」


 普段冷静で斜に構えている大魔女エントラ様がここまで大きな声で全員に伝えるなんて、コレはただ事ではない。


「ン……どうした、ワシはあの黄金の巨神と戦っておったはずじゃが」

「ドラゴンの神様、今は動かないで!」

「ななな、何じゃ……まあ、わかった。今は其方らの言う通りにしよう……って、なんじゃアレは!?」


 タイミングが悪いことに、この状況下でアンさんが目を覚ましてしまった。


「イオリ、絶対にこの虹色の光の膜から出たらダメだからねェ。尻尾でも出てたらそこが完全消滅するからねェッ」

「ななななな、何じゃと!? 今は一体どうなっておるのじゃ!」


 ボクはアンさんの前に行き、今の状況を説明した。

 黄金巨神ダルダロスが巨大な光の柱のような剣を両腕から出し、大魔女エントラ様はその一撃を耐えるための究極防護魔法を使ったというと、アンさんは申し訳なさそうな顔を見せた。


「すまぬのう、ワシが不甲斐ないばかりに」

「そんなこと言ってる場合じゃないからねェ! とにかく今はあの一撃を耐えないと全員魂すら消え去るからねェッ!」


 大魔女エントラ様の言っているのは誇張でも何でもない。

 あの一撃は本当に全てを打ち砕き、空間すらも切り裂くほどの力だ。


 ボク達の命運は彼女の絶対防護魔法にかかっているといっても過言ではない。

 そんなボク達を見下ろすように立っていた黄金巨神ダルダロスの顔無き水晶に謎の文様が浮かんだ。

 その直後、ダルダロスの両腕が鋭く電光石火の如く振り下ろされた!


 何か不思議な今までに聞いたことの無いような音が聞こえる。

 それはまるでとてつもなく硬い何かを切り裂こうとするような音だ。


 黄金巨神ダルダロスの放った光の剣は、本当に空間の壁を切り裂いたとでもいうのか……。


 ボク達は虹色の絶対防護魔法の膜の中で光の剣が全てを貫くのを耐え続けた。

 少しでも大魔女エントラ様が魔力を減らせばそこから一気に防護魔法の障壁が砕ける。

 ボク達はそうさせないために全員で手をつなぎ、彼女に魔力を送った。


「くぅっ……これほどとはねェ……もう、魔力が持ちそうに……無いねェ」


 虹色の七枚の障壁が一枚ずつ割れていく、黄金巨神ダルダロスの光の剣の威力が絶対防護魔法を上回っていたようだ。

 だからといって今のボク達に何かできることがあるわけではない。

 今はただ大魔女エントラ様に魔力を送り続けるだけだ。


 赤、紫、黄色と障壁が一枚ずつ砕かれていく。

 これが全て砕けた時、ボク達全員の命は終わってしまう。

 そして、障壁は砕け、ついに最後の一枚になってしまった。


 もうこれまでか、そう思った時……黄金巨神ダルダロスの方にも異変が起きていた。

 何とダルダロスの腕が少しずつ砕けていた。

 どうやら先程のボク達の攻撃がヤツの内部に負担をかけていたらしい。


 これで結果がわからなくなった。

 生き残るのはボク達か、黄金巨神ダルダロスか。


 この戦い、最後に力の尽きた方が負ける!

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