640 必殺の技が撃つのは
「お師匠様、バリアフィールドなら私も使えますわ。お師匠様は黄金巨神の方をお願い致しますわ」
「ルームの安全は僕が守る。ユカ様、こちらは任せて下さい」
ルームさんがバリアフィールドの魔法を形成し、ホームさんはその魔法を発動させるために無防備になる彼女を守ると言っている。
「わかった。それじゃあ二人共任せたからねェ。妾はあの光の矢を操ればいいってわけだねえェ!」
大魔女エントラ様はボクの言ったように黄金巨神の光の矢を操る作戦に乗ってくれた。
「す、すまぬ。ワシはもう限界じゃ、後は頼むぞ……」
黄金巨神ダルダロスと巨体で格闘していたアンさんはついに力尽きてしまい、紫のドラゴンから女の子の姿に戻ってしまった。
「ドラゴンの神様、大丈夫ですか!?」
「お、おう。そなた達は……すまぬがワシはもう動けんわい。後は頼む」
アンさんはそう言うとフロアさんとサラサさんの元で力を使い果たし、寝てしまった。
「俺達はドラゴンの神様を守らないと、一族の誇りにかけても守り抜く」
「フロア、我も共に戦う!」
フロアさんとサラサさんは無防備になったアンさんを守るように二人で攻撃に構えた。
だが、この二人だけであの黄金巨神の強烈な攻撃に耐えらえるとはとても思えない。
そうなると頼りになるのは大魔女エントラ様だ。
「さあ、光の矢を撃ってくるんだねェ。そうすれば返り討ちにしてあげるからねェ!」
大魔女エントラ様が黄金巨神ダルダロスを挑発している。
アイツに人間の言葉が通じるかどうかは分からないが、挑発していることは通じたらしい。
「バリアフィールド!」
ルームさんが魔法で絶対障壁の幕を張った。
その大きさは大魔女エントラ様には劣るものの、それでもボク達全員を囲むだけの魔法が使えたのは流石SSクラスといえるだけの魔力だろう。
「ルームちゃん、ありがとうねェ! それじゃあ妾も本領発揮と行こうかねェ!」
大魔女エントラ様が杖を振りまわし、魔力を集中させた。
その直後、黄金巨神ダルダロスの顔の無い水晶に光が奔った。
丸い光、三角の光、そして縦と横の光だ。
これが何を意味する古代語かはわからない。
だがこのサインは間違いなくボク達を攻撃するという意思の表れだろう。
黄金巨神ダルダロスが腕を組み、その両腕から一気に数百の光の矢を放った!
「その力、自分自身で味わってみるんだねェッ!」
大魔女エントラ様の魔力が数百とも言える光の矢を捉えた。
そして彼女はその光の矢を操り、黄金巨神ダルダロスに全部叩きつけた。
「これでも食らうんだねェ!」
激しい爆風と魔力がダルダロスの表面を吹き飛ばした!
やはりソウイチロウさんの言っていたことは正しかった。
最強の武器とも言える黄金巨神ダルダロスの光の矢こそが、ヤツを倒すことのできる唯一の武器だったといえるのだ。
黄金の魔力とオリハルコンで守られたダルダロスの腕の装甲が吹き飛んだ!
どうやら腕の内部まではオリハルコンで作られているようではなさそうだ。
「あの部分からなら魔法も効くかもねェ! スーパーノヴァ!」
大魔女エントラ様の最強魔法が火を噴いた。
今度は魔法が確実に効いているようだ。
黄金巨神ダルダロスの腕、肩、足が内部から爆発している。
どうやら光の矢が大魔女エントラ様の魔法で内部で誘爆しているようだ。
黄金巨神ダルダロスは初めてボク達の前に膝をついた。
これは確実に大ダメージを受けている。
だが、それで奴を倒せると思っていたボク達に対し、黄金巨神ダルダロスは最後の武器を使おうとした。
ヤツは大きく両腕を伸ばし、手の周りの袖の部分から大量のエネルギーを空に向かって放った。
それは、あまりにも巨大なエネルギーの塊であり、下手すればこの空間すら焼き切るほどのものだった。
「な……何だアレは!?」
「何か物凄く悪い状況みたいだねェ……これは妾も絶対防護魔法を使わないといけないかもねェ」
黄金巨神ダルダロスの両腕は、天高くそびえたつ巨大な光の剣のようになっていた。




